欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/5/18

EUその他

市場安定化準備制度の19年導入で合意、7月にも欧州議会で採択へ

この記事の要約

EU加盟国は13日開いた大使級会合で、EU排出量取引制度(EU-ETS)の改革案について協議し、2019年1月から排出権価格を下支えするための「市場安定化準備制度(MSR)」を導入することで合意した。同案はすでに欧州議会 […]

EU加盟国は13日開いた大使級会合で、EU排出量取引制度(EU-ETS)の改革案について協議し、2019年1月から排出権価格を下支えするための「市場安定化準備制度(MSR)」を導入することで合意した。同案はすでに欧州議会と加盟国の代表による会合で承認されており、今月末の欧州議会環境委員会と来月の環境相理事会を経て、7月の欧州議会本会議で採択される可能性が高い。

EU-ETSでは排出枠の無償割当を段階的に減らし、27年までにオークションによる有償割当に全面移行することが決まっているが、ユーロ危機に伴う景気低迷で企業の生産活動が停滞した結果、排出枠が大量に余って供給過剰となり、排出権価格の低迷が続いている。MRSは排出枠の需給バランスを改善するための具体策として欧州委員会が昨年1月に打ち出した構想で、余剰排出枠を一旦リザーブしておき、需給がひっ迫した場面で取り崩して排出権価格を安定させる仕組みだ。

加盟国は今回、18年中にMSRの枠組みを確立し、19年1月1日付で同制度の運用を開始することで合意した。このほか14-16年に有償配分する排出枠のうち、「バックローディング(排出枠の入札延期措置)」によって19年以降に入札が延期される9億トン分をMSRのリザーブに回すことや、供給過剰のため対象施設への割当が見送られた無償排出枠については20年の段階でMSRに組み入れる案で合意した。

ロイター通信によると、会合ではポーランド、ハンガリー、ルーマニア、ブルガリア、ギリシャ、キプロスが19年のMSR導入に反対を表明したものの、最終的に賛成多数で承認された。同制度をめぐっては、欧州委が当初21年の導入を提案したのに対し、低炭素社会への転換を推進する立場から17年への前倒しを主張する英国、フランス、ドイツなどと、導入時期を21年以降とするよう求めるポーランドなど東欧諸国の間で意見対立が続いていたが、最近になってチェコが早期導入を容認したことで合意形成に向けて大きく前進した経緯がある。