欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/7/27

EU情報

英スカイと米映画大手6社に異議告知書、放映権契約の地理的制限条項を問題視

この記事の要約

欧州委員会は23日、英有料テレビ大手スカイUKと米大手映画会社が結んでいる放映権契約がEU競争法に抵触する恐れがあるとして、合わせて7社に異議告知書を送付したと発表した。欧州委によると、スカイと映画会社の契約には国境を越 […]

欧州委員会は23日、英有料テレビ大手スカイUKと米大手映画会社が結んでいる放映権契約がEU競争法に抵触する恐れがあるとして、合わせて7社に異議告知書を送付したと発表した。欧州委によると、スカイと映画会社の契約には国境を越えたサービス提供を制限する条項が盛り込まれており、反競争的協定を禁じたEU法に違反するとの見方を強めている。各社には書面または公聴会を通じて反論の機会が与えられるが、最終的に競争法違反と認定された場合、ビジネスモデルの抜本的な見直しを迫られることになりそうだ。

異議告知書の送付先はスカイのほかウォルト・ディズニー、NBCユニバーサル、パラマウント・ピクチャーズ、ソニー、21世紀フォックス、ワーナー・ブラザーズ。米国の有力映画会社は通常、1カ国(あるいは1つの言語圏)につき1社の有料テレビ事業者と独占的契約を結んでいるため、映画の放映権は各事業者が拠点を置く国に限定され、国境を越えて放映することができない。欧州委はこうした「地理的制限(ジオブロッキング)」がEU法で禁止された競争制限的協定にあたる可能性があるとして、昨年1月からスカイを含む欧州の有料テレビ事業者と米映画会社が結んでいる放映権契約について調査を進めていた。

地域を限定した放映権契約が必ずしも競争法に違反するわけではないが、欧州委によると、スカイと米6社の契約には英国とアイルランド以外からはスカイのサービスにアクセスできないようにする取り決めが含まれており、「潜在顧客に対する受動的(消極的)な販売」まで制限する内容になっている。ヴェスタエアー委員(競争政策担当)は「消費者はEU内のどこにいても自分が選んだ有料テレビを視聴したいと考えているが、スカイと映画会社の取り決めによってそれが不可能になっていることが判明した」と説明。また、スカイにとっても地理的な制約がなければ「商業上の観点」から自由にサービス範囲を決めることができると指摘し、映画会社との取り決めが消費者の選択肢を狭め、同時に有料テレビ事業者間の国境を越えた競争を阻害しているとの見方を示した。

欧州委は現在、スカイUK以外に仏カナル・プリュス、伊スカイ・イタリア、独スカイ・ドイチュラント、スペインDTSと米大手映画会社との放映権契約についても調査を進めている。

欧州委は今年5月に公表したデジタル単一市場の創設に向けてEUが取り組むべき重点政策をまとめた戦略文書で、16年末までに情報通信技術(ICT)、メディア、著作権など幅広い分野で国ごと異なる規制や制度を見直し、国境を越えたオンライン取引やコンテンツ流通を妨げる障壁を取り除く方針を打ち出した。ケーブルテレビや衛星放送などの有料多チャンネル放送についても規制の枠組みを見直し、今秋にもオンラインでの番組配信に関する新たなルール作りなどについて意見募集を開始する意向を示している。