欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2015/10/19

EU情報

GM作物の認可ルール、「オプトアウト」導入がとん挫

この記事の要約

欧州議会環境委員会は13日、遺伝子組み換え(GM)作物の認可ルールについて採決を行い、EUが域内への輸入を認可した品種について、加盟国が自国での流通・販売を制限または禁止することを認める法案を反対多数(反対47、賛成3、 […]

欧州議会環境委員会は13日、遺伝子組み換え(GM)作物の認可ルールについて採決を行い、EUが域内への輸入を認可した品種について、加盟国が自国での流通・販売を制限または禁止することを認める法案を反対多数(反対47、賛成3、棄権5)で否決した。GM作物の栽培に関しては、EUが認可している場合でも加盟国が独自の判断で禁止できる「オプトアウト」制度が導入されているが、環境委は流通段階でも適用除外を認めれば認可ルール自体が機能しなくなり、単一市場としての統一性が損なわれると指摘している。法案は今月28日の欧州議会本会議で採決が行われる見通しだ。

GM作物をめぐっては、英国やスペインなどの推進派とフランスを中心とする反対派の間で依然として溝が深く、安全性に対するEU市民の懸念も根強い。これまでに食用および飼料用としておよそ60品目の輸入が認可されているが、実際にはすべて家畜飼料として使用されている。また、域内での栽培が認可されているのは米モンサントが開発した害虫抵抗性のトウモロコシ「MON810」のみで、実際に栽培されているのはスペインとポルトガルの2カ国にとどまっている。

こうしたなか、今年4月にはEUが認可した品種であっても、自国での栽培を望まない加盟国は社会経済的要因や土地利用に関する政策などを根拠として、栽培申請の地理的範囲から自国領土の一部またはすべてを除外できるオプトアウト制度が導入された。加盟国に最終的な決定権を与えたうえで、安全性が確認された品種については速やかに域内での栽培を認可することで、米国などの批判をかわす狙いがある。しかし、欧州委員会はGM作物に対するEU市民の根強い懸念に配慮して、加盟国により幅広い権限を与える必要があると判断。4月にGM作物の流通段階についてもオプトアウト制度を導入し、加盟国が独自の判断で自国への輸入を禁止できるようにする法案を打ち出した。

環境委のラビア委員長は、加盟国にGM作物の流通を禁止する権限を与えた場合、EUとして単一の認可制度を維持することが困難になり、GM支持国と反対国の間で「国境管理」が必要になると指摘。「大多数の委員が域内市場を脅かす制度の導入に反対票を投じた」と説明している。