欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2016/1/25

EU情報

ECB総裁が追加金融緩和示唆、3月の理事会で検討へ

この記事の要約

欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は21日に開いた定例政策理事会後の記者会見で、中国など新興国経済の失速や原油安、世界的な金融市場の動揺がユーロ圏の景気を圧迫し、デフレ懸念がくすぶっていることを受けて、3月に開く次回の理 […]

欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は21日に開いた定例政策理事会後の記者会見で、中国など新興国経済の失速や原油安、世界的な金融市場の動揺がユーロ圏の景気を圧迫し、デフレ懸念がくすぶっていることを受けて、3月に開く次回の理事会で追加金融緩和を検討すると発表した。同月にまとめる内部経済予測の結果を参考に、追加措置実施の是非を判断する方針だ。

ECBはユーロ圏の景気、物価を下支えするため2014年から超低金利政策を導入しているが、厳しい状況が続いていることから15年3月にユーロ圏の国債や資産担保証券(ABS)、担保付き債券(カバードボンド)、EUの機関が発行する債券などを毎月600億ユーロ買い入れる異例の量的金融緩和を開始。12月には追加の金融緩和を決め、国債などを買い取る量的緩和の実施期間を17年3月まで6カ月延長したほか、民間金融機関が手元資金をECBに預け入れる際の金利(中銀預金金利)のマイナス幅を0.2%から0.3%に拡大した。

しかし、市場では予想されていた国債買い取り規模の拡大が見送られ、マイナス金利の拡大幅も予想を下回ったことから失望感が広がった。直近のインフレ率も前年同期比0.2%と低水準にとどまり、ECBが目標とする2%を大きく割り込んでいる。

ECBは同日の理事会で、主要政策金利を0.05%に据え置いたほか、現行の金融緩和策の継続を決めた。これは予想通りで、市場の注目は今後の金融政策に関するドラギ総裁の発言に集まっていた。

ドラギ総裁は記者会見で、12月の追加金融緩和について「適切だった」と述べ、不十分との批判に反論した。その上で、中国の景気失速や世界的な株安、原油価格の下落が進んでいることに言及し、「年初から下振れリスクが強まっている」と指摘。3月10日に開く次回の理事会での「金融政策の見直しが必要だ」と述べ、同月に追加金融緩和に踏み切る用意があることを示唆した。物価と景気を押し上げるため、対応に「制限を設けない」とも述べた。

この発言を受けて、市場ではECBが3月にも国債買い入れの規模やマイナス金利の拡大を決めるとの観測が広がり、下落が続いていた欧州の株価は同日に反転。ユーロも対米ドルで値下がりした。