欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2017/5/8

EU情報

仏大統領選、マクロン氏が大差で勝利

この記事の要約

フランスで7日に実施された大統領選の決選投票で、親EUと移民受け入れ継続などを唱える中道・独立系のエマニュエル・マクロン前経済相(39)が反EU、移民排斥を掲げる極右・国民戦線のマリーヌ・ルペン党首(48)を大差で破り、 […]

フランスで7日に実施された大統領選の決選投票で、親EUと移民受け入れ継続などを唱える中道・独立系のエマニュエル・マクロン前経済相(39)が反EU、移民排斥を掲げる極右・国民戦線のマリーヌ・ルペン党首(48)を大差で破り、仏史上最年少の大統領となることが決まった。これよってEUの軸となってきたフランスが英国に続いて離脱する事態は回避されることになった。

仏内務省の集計によると、開票率90%の時点の得票率は、マクロン氏が66%、ルペン氏が34%。マクロン氏は当選確実となった7日夜、EUの公式歌であるベートーベンの「歓喜の歌」が鳴り響く中、支持者を前に「フランスは勝った」と勝利を宣言した。

EU離脱、移民排斥など過激な政策を掲げるルペン氏は、仏国民の既存政治への不満を背景に支持を広げ、一時は支持率でトップに立った。しかし、選挙戦終盤でマクロン氏の巻き返しにより失速。23日に実施された第1回投票ではマクロン氏に次ぐ2位となった。決選投票の得票率は、父親のジャン・マリー・ルペン氏(国民戦線前党首)が2002年の大統領選で得た18%を大きく上回ったものの、マクロン氏に遠く及ばなかった。フランス国民はEU残留を支持した格好となる。

今年に国政選挙が相次ぐEUでは、英国の国民投票でのEU離脱決定、米トランプ政権の誕生に象徴される「ポピュリズム(大衆迎合主義)」政権の誕生が懸念されていた。しかし、3月に実施されたオランダの総選挙で、優勢を伝えられた極右・自由党が破れ、中道右派の与党・自由民主党が第1党を維持。EUの行く末を占うとして注目された仏大統領選でも親EU派が勝利したことで、安堵の声が広がっている。外国為替市場ではEU経済の混迷も避けられるとして同結果が歓迎され、ユーロが対ドルで大きく上昇した。

ただ、今回の大統領選では、これまで大統領を輩出してきた保革の二大政党の候補者が第1回投票で姿を消すなど、国民の現状への不満が露呈し、分断が進んでいることも浮き彫りとなった。マクロン次期大統領にとっては、6月の議会選が最初の大きな試練で、自身が率いる政治団体「前進」など中道派が過半数を確保できなければ難しい政局運営を迫られることになる。マクロン氏は勝利宣言に際して、国内の分断が進み、極右勢力の支持者が増えていることを「理解している」と発言。「多くの国民が示した怒り、不安、疑問も解している。彼らの声に耳を傾けることが私の責任だ」と述べ、国民の融和に取り組む意向を表明した。