欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2017/7/24

EU情報

欧州中銀が金融政策維持、量的緩和見直しは「秋に議論」

この記事の要約

欧州中央銀行(ECB)は20日に開いた定例政策理事会で、現行金融政策の維持を決めた。焦点となっている量的金融緩和の見直しについては、ドラギ総裁が理事会後の記者会見で、「秋に議論する」と述べ、早期の実施に否定的な考えを示し […]

欧州中央銀行(ECB)は20日に開いた定例政策理事会で、現行金融政策の維持を決めた。焦点となっている量的金融緩和の見直しについては、ドラギ総裁が理事会後の記者会見で、「秋に議論する」と述べ、早期の実施に否定的な考えを示した。

ECBはユーロ圏のデフレ回避と景気下支えを目的に、ユーロ圏の国債などを買い入れる異例の量的金融緩和を15年3月に開始した。現在の買い取り額は月600億ユーロで、2017年12月末まで実施することになっている。

ユーロ圏では16四半期連続でプラス成長となっており、デフレの恐れもなくなったことから、来年以降に量的緩和が縮小するとの見方が強まっている。ドラギ総裁が6月の理事会後の記者会見で追加利下げを行わない方針を打ち出したほか、同月末にポルトガルで行った講演で、量的緩和を段階的に縮小する「テーパリング」を示唆したことも背景にある。

しかし、ドラギ総裁は今回、賃上げの動きが鈍いことなどに言及し、物価上昇のペースが加速する兆しがないと指摘。来年以降に量的緩和を縮小するかどうかについて、理事会の議論開始を今秋に先送りする方針を示した。また、今後の状況に応じて量的緩和を拡充する用意があることも確認した。

ドラギ総裁が量的緩和縮小の判断を先送りするのは、ユーロ圏のインフレ率が6月時点で前年同月比1.3%と、ECBが目標とする2%を大きく下回っているほか、早期の縮小が金融市場の動揺を招き、景気回復に悪影響を及ぼすのを避ける意図があるとみられる。ただ、市場では量的緩和が来年に縮小するのは確実との見方が揺るがず、同日にユーロは急上昇。長期金利の指標となるドイツの10年物国債の利回りも上昇した。