欧州委員会動向、EU域内産業・サービス・政策をウオッチ

2017/8/21

EU情報

EU離脱後に一時的な関税協定締結、英政府が提案へ

この記事の要約

英政府は15日、2019年3月にEUを離脱してから、一時的な関税協定をEUと締結することを目指す方針を打ち出した。最大の貿易相手であるEUとの通商で、離脱直後に関税、通関手続きが導入され、企業が悪影響を受けるのを避けるの […]

英政府は15日、2019年3月にEUを離脱してから、一時的な関税協定をEUと締結することを目指す方針を打ち出した。最大の貿易相手であるEUとの通商で、離脱直後に関税、通関手続きが導入され、企業が悪影響を受けるのを避けるのが狙い。2年程度の移行期間を設けて、関税同盟を維持することを図る。ただ、英国にとって「いいとこ取り」の提案で、EUが応じるかどうかは不透明だ。

英国はEU離脱に伴い、EU単一市場からも脱退する方針で、域内と関税ゼロで貿易ができる関税同盟にとどまることはできない。英政府はEU離脱が双方に及ぼす影響を緩和するため、交渉妥結後に一定の移行期間を設けることをEUに提案することになっており、一時的な関税協定締結は同方針の一環。デービス離脱担当相がEUとの将来の通商関係をめぐる交渉の指針のひとつとして明らかにした。

英国側には移行期間中に関税同盟に事実上とどまり、通商の混乱を避けながら新たな関係を構築するまでの時間を稼ぎたいという意図がある。将来的には通関手続きなどを高度に簡素化するか、EUとの国境に税関を設置しない特別な協定を結ぶことを視野に入れる。また、関税同盟に加わっている国は通常、域外の第3国との自由貿易協定(FTA)を個別に締結することはできないが、英政府は移行期間中にFTA交渉を開始することを認めるようEU側に求める方針だ。

EUと英国の離脱交渉では、英国に居住するEU市民の権利保護、離脱に伴い英国が支払う「清算金」など主要な離脱条件について合意してから、貿易など将来の関係についての交渉を進めることになっている。英政府は離脱条件をめぐる交渉が難航する中、将来の関係で最重要となっている貿易に関する独自の交渉指針を打ち出した格好だが、「いいとこ取り」は許さないというEU側の姿勢と相反するもので、難しい交渉を迫られそうだ。

一方、英政府は16日、英国の北アイルランドと国境を接する加盟国アイルランドとの国境管理に関する交渉方針も発表し、離脱後も国境検問所を設けない意向を表明した。

アイルランドとの国境管理問題は、離脱条件をめぐる交渉での焦点のひとつ。英国の提案が受け入れられると、北アイルランドとアイルランドの間を引き続きパスポートなしで往来できるようになる。