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EUが「離脱協定」の草案公表、北アイルランドは関税同盟残留

2018年3月5日発行 No.189号

欧州委員会は2月28日に公表したEUと英国の「離脱協定」の草案で、英国の北アイルランドを離脱後もEUの関税同盟にとどめる案を示した。北アイルランドと国境を接する加盟国アイルランドとの間で、英の離脱後も人やモノが自由に往来できるようにするのが目的だが、英政府は国家が分断されるとして猛反発している。

今回の草案は、EUと英国が昨年12月に完了した離脱条件に関する協議の合意内容と、現在交渉中の移行期間、まだ開始していない将来の関係をめぐる交渉に関するEU側の指針を法的文書の形で条文化したもの。今後の交渉のたたき台となる。

北アイルランドとアイルランドの国境問題については、人やモノの流れを制限しないようにするため、厳しい国境管理を避けることで双方は12月に合意したが、具体的にどのような方法で実施するかは決まっていなかった。

EUが草案で提案したのは、北アイルランドをEUが設ける「共通規制地域」に組み込み、EUの関税同盟に事実上とどめるというもの。英国の一部だけが関税同盟に入り、北アイルランドと英本土の間に事実上の国境が引かれる形となる。

EUのバルニエ首席交渉官は、これは国境問題の現実的な解決策が見つからない場合の「バックネット」として提示したもので、英国を分断する意図はないと説明。英国側が別の案を提示すれば交渉に応じることを明言した。しかし、英政府は北アイルランドが本土から切り離されるとして即座に反発しており、メイ首相は同日に議会で「これを受け入れる英首相などいるわけがない」と述べた。

このほかEUは草案で、1月に加盟国が採択した移行期間をめぐる協議の指針に沿って、同期間の期限を2020年12月末とすることを明記。英国が要望する期間延長に応じない姿勢を示した。また、◇英国は移行期間中、EUの意思決定に参加できず、EUの法令が適用され、EU司法裁判所の管轄下に置かれる◇英国が移行期間中にEUのルールに違反した場合、EU司法裁判所での手続きを経ずに、EU単一市場へのアクセスを制限する制裁措置を発動する仕組みを設ける◇英国は移行期間中に移住した他の加盟国出身者に永住権を認める――ことなども盛り込んだ。

英首相、将来の関係について演説

一方、英メイ首相は2日、将来のEUとの関係についてロンドン市内で演説を行った。この中で首相は、単一市場と関税同盟から離脱することを明言しながらも、自由貿易協定(FTA)締結によって、できる限り現在の通商関係を維持することを目指す意向を表明した。

離脱交渉ではEU側が明確な方針を示している一方で、英政府は国内がEUとの通商関係を断ち切ってでも離脱する「ハードブレグジット(強行離脱)」派と「ソフトブレグジット(穏健な離脱)」派に分かれ、政権の求心力も低下していることから、これまで具体的な指針を提示していなかった。

メイ首相の今回の演説は、両派を意識した「ソフトなハードブレグジット路線」(英フィナンシャル・タイムズ)と言える内容。首相は通商について、EU単一市場と関税同盟から離脱するものの「世界で最も完全な自由貿易協定を結ぶ」と述べた。その実現にはEUに譲歩する必要があるため、国内の製薬、化学などの業種で離脱後もEU規制を維持するほか、EUの競争法、国家補助ルールなど一部の規則に従い、EU司法裁判所の判決が国内で一定の効力を持つようにする方針を示した。

さらに首相は関税同盟離脱について、貿易にできる限り影響が出ないようにするため、新たな関税協定を結ぶ意向を表明。EUに輸出される製品にEUの関税を適用し、英国の港湾などで英当局がEU当局の代行として関税を徴収するといった案を示した。

EUのバルニエ首席交渉官は、英国側が譲歩の必要性に言及するなど、今後の交渉に柔軟な姿勢で臨む方針を打ち出したことを歓迎した。それでも、今回の演説で示した方針は、EUのルールに従うのは英国側に恩恵がある分野だけになるなど、EUが嫌う「いいとこ取り」が否めない内容で、交渉は難航が予想される。

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