2014/6/4

ルーマニア・ブルガリア・その他南東欧・トルコ

大洪水の損害額28億~33億ユーロに=EBRD試算

この記事の要約

欧州復興開発銀行(EBRD)は5月29日、セルビアおよびボスニア・ヘルツェゴビナを襲った気象観測史上最悪の洪水による被害額が、大まかに見積もって28億~33億ユーロに上るとの試算結果を明らかにした。両国経済で比重の大きい […]

欧州復興開発銀行(EBRD)は5月29日、セルビアおよびボスニア・ヘルツェゴビナを襲った気象観測史上最悪の洪水による被害額が、大まかに見積もって28億~33億ユーロに上るとの試算結果を明らかにした。両国経済で比重の大きい農業が多大な損害をこうむったことや、インフラの破壊、セルビアのエネルギー設備への被害などを理由に挙げている。今年の経済成長率は従来予測を大きく下回り、インフレ率が上昇する懸念もある。

損害額はセルビアで15億~20億ユーロ、ボスニア・ヘルツェゴビナで13億ユーロに上るもようだ。

農業はセルビアで国内総生産(GDP)の10%、ボスニア・ヘルツェゴビナで6%の比重を占めるが、数億ユーロ規模の損害を受けたとみられている。現時点では国内の食料需要はまかなえる見通しだが、不足する事態となればインフレ率の上昇は避けられない。いずれにしても、輸出額が減少するのは確実な情勢だ。

セルビアでは発電所が大きな打撃を受けた。また、同国電力需要の半分以上の電源を供給するコルバラ炭鉱が水没したことも大きな痛手となっている。

ボスニアは、洪水や土砂崩れで内戦時代の未撤去地雷の位置が変わってしまったというリスクも抱える。

EBRDは、今年のセルビア経済成長率を1%、ボスニア・ヘルツェゴビナについては1.8%と予測していた。しかし、水害の影響で伸び率は小さくなる見通し。国際金融機関(IFI)からの融資や二国間支援で、建設および関連業界がどれだけ復興需要に応えられるかが、下げ幅を左右するとみられる。

EBRDは既存基金からの資金を部分的に洪水地域支援に振り向ける。道路、上下水設備および電力インフラの復興に優先して融資する方針だ。

欧州連合(EU)は27日に両国に対し6,500万ユーロの支援を決めた。世界銀行は16日にボスニア・ヘルツェゴビナに2,400万米ドルの融資を決定。さらに緊急支援枠として5,000万ドルの提供について検討中だ。既存の融資枠5億ドルの用途変更も考慮に入れているという。

セルビアはEUの加盟候補国として、欧州連帯基金からの支援を申請できる。また、ボスニア・ヘルツェゴビナについてはEU側が潜在的加盟候補国に対する支援措置をどう運用できるかを調査している。