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中東欧、景気過熱の恐れ

2017年12月6日発行 No.1044号

景気回復が進む欧州で、特に中東欧経済成長が好調だ。欧州連合(EU)統計局が発表した今年7-9月期の中東欧諸国の国内総生産(GDP)伸び率(前年同期比)は、ルーマニアの8.6%を筆頭に、ポーランドとチェコが5%、ラトビアが6.2%、スロバキアとリトアニアが3.4%となるなど、多くがEU平均の2.5%を上回った。しかし、景気の過熱によるインフレなどの懸念があるほか、同諸国は人口流出に伴う労働力不足や生産効率の停滞など構造的な問題も抱えている。特にポピュリスト的な政権の政策によって改革が停滞する可能性が指摘されている。

中東欧諸国は10年ほど前にも同様の好景気に沸いた。2008年に金融危機が発生した際に投資家は資金を引き揚げてしまい、政府は支出を抑制、多くの国が不況に陥った経験がある。

景気の過熱については、国際通貨基金(IMF)は高い成長率が続けばインフレの高進を招くと指摘する。また同地域の潜在成長率は中欧諸国で平均2.3%、バルト諸国では3%と経済危機前に比べ半分まで低下していることも懸念材料だ。

現在インフレ率は目標値の範囲内に収まっている。これは消費財の輸入元である他のEU諸国の物価上昇が低く抑えられているためだ。貸出金利は低く市場は安泰なように見える。

しかし中東欧は景気回復の足かせとなりかねないいくつかの課題に直面している。第1の懸念材料は平均年齢の上昇と人口の国外流出だ。過去25年の間に総人口の5.5%に当たる2,000万人が国外に移住した。移住者は特に若者や高学歴層が多い。例えばラトビアでは2000年以来労働人口のおよそ4分の1が失われた。経済危機の間は人口流出によって失業率が低下したが、現在では逆に労働力の不足が問題となっている。賃金の上昇で投資が進まず生産性向上の妨げとなる危険性がある。

IMFによると2014年以来中東欧諸国の給与水準は4.5%上昇した一方で、生産性の伸びは2%にとどまった。給与の伸びが競争力の低下を招くと共に消費を過熱させる恐れも出てきた。

第2の懸念材料は政治的なものだ。中東欧諸国では過去25年間、様々な課題を克服するために政治的に難しい決定がなされてきた。同地域の生産性上昇の背景には、市場の自由化、国有資産の民営化、補助金削減、汚職対策などがある。しかし最近の経済危機はこれら諸国における政治的な光景を一変させた。

いくつかの国は投資による生産性上昇を目指すことなく社会保障費を増額した。例えばルーマニアでは高い水準の経済成長が続いているにもかかわらず4-6月期の財政赤字はEU加盟国中最高となる国内総生産(GDP)の4.1%に上る。そのためさらに景気が過熱する恐れがある。ポピュリスト的な政権は困難な決定を避ける傾向がある上、すでに実施されている改革を巻き戻す可能性すらある。労働力不足に対処するには、女性や高齢者の労働意欲を引き出す労働市場改革や移民受け入れの緩和、教育水準の向上、健康医療システムの改善などの改革が必要だ。

また関連して重要なのは制度の強化だ。世銀の世界ガバナンス指数と1人当たりGDPには相関関係がある。中東欧ではポーランドとハンガリーの新法によって中銀と司法の長期的な独立性が脅かされている。

欧州復興開発銀行(EBRD)のシュチュレク氏は、こうした課題は中東欧が過去に直面してきた問題に比べれば悪いものではないという。しかしポピュリスト的な政権によって、これまでの改革によって手に入れた果実が無に帰する可能性があると警告する。生活水準を西欧並みに引き上げるためには、経済が好調な時であっても政府が困難な決定を行う能力があることを示す必要があると同氏は指摘している。

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