欧州経済の中心地ドイツに特化した
最新の経済・産業ニュース・企業情報をお届け!

2015/12/16

経済産業情報

欧州委が独を提訴、カーエアコン冷媒問題で

この記事の要約

欧州連合(EU)の欧州委員会は10日、ドイツ政府を欧州司法裁判所(ECJ)に提訴すると発表した。独自動車大手ダイムラーが高級乗用車メルセデスの一部モデルにEUの「カーエアコン指令(2006/40/EC)」に反する旧冷媒を […]

欧州連合(EU)の欧州委員会は10日、ドイツ政府を欧州司法裁判所(ECJ)に提訴すると発表した。独自動車大手ダイムラーが高級乗用車メルセデスの一部モデルにEUの「カーエアコン指令(2006/40/EC)」に反する旧冷媒を使用していることを、独当局が容認し同委の是正要求にも応じなかったためだ。欧州委が勝訴すると、ドイツは制裁金支払いのほか、同指令に反して型式認定を認めたメルセデス車の認定取り消しを命じられる恐れがある。

EUでは温暖化防止策の一環として2013年1月から、従来カーエアコン用冷媒として使われてきた「R134a」などの代替フロンに代わり、地球温暖化係数(GWP:CO2の何倍の温室効果を有するかを示す値)150以下の冷媒を使用することが義務づけられた。この基準を満たすのは最近まで米ハネウエル・インターナショナルの「R1234yf」に限られており、各メーカーは11年以降に型式認定を受けたすべてのモデルに同新冷媒を採用しなければならなかった。

ほとんどのメーカーは同ルールを順守したものの、ダイムラーは独自に行った試験で高温のエンジンルーム内で引火性を持つことが確認されたとして、12年9月にR1234yfの採用中止を決定。すでに同冷媒の使用で型式認定を受けていた新型「Aクラス」など3モデルで引き続き旧冷媒R134aを使用することにした。

独連邦陸運局(KBA)は13年5月、R134aを再採用したこれらモデルの型式認定を行った。

欧州委はこれを受け14年1月、新冷媒R1234yfに安全性の問題はないとの見解をまとめ、独政府に規制の順守を求める正式通知書を送付した。だが、ドイツ側はEUルールに対する違反はないとして是正策を講じなかった。このため、欧州委は同年9月、新たに理由付きの意見書を送付。それでもドイツが応じなかったため提訴に踏み切った。

ダイムラーは今年10月、CO2を冷媒に用いたカーエアコンを2017年からメルセデス車に搭載すると発表した。同冷媒はGWPが100であるためR1234yfとともにEUの基準を満たしており、同社は上級モデルである「Sクラス」と「Eクラス」に標準装備する。それ以外のモデルでは当面、CO2冷媒よりもコストが低いR1234yfを利用。エアコンに引火防止機能を付け安全性を確保する。

企業情報
経済産業情報
COMPANY |
CATEGORY |
KEYWORDS |