欧州経済の中心地ドイツに特化した
最新の経済・産業ニュース・企業情報をお届け!

2016/9/21

総合 - ドイツ経済ニュース

商用車ブレーキのハルデックス、ZFとクノールブレムゼの買収合戦が激化

この記事の要約

ブレーキ大手の独クノールブレムゼは16日午前、スウェーデンの商用車用ブレーキメーカー、ハルデックスに対する株式公開買い付け(TOB)で1株当たりの買い取り価格を従来の現金110スウェーデンクローナから同125クローナに引 […]

ブレーキ大手の独クノールブレムゼは16日午前、スウェーデンの商用車用ブレーキメーカー、ハルデックスに対する株式公開買い付け(TOB)で1株当たりの買い取り価格を従来の現金110スウェーデンクローナから同125クローナに引き上げると発表した。ハルデックス買収で張り合う独自動車部品大手のZFフリードリヒスハーフェンが買い取り価格を14日に同100クローナから110クローナへと引き上げたことに対抗した格好。ZFはクノールブレムゼのTOB価格引き上げを受け、16日午後、買い取り価格を120クローナへと再度引き上げたほか、これまで今月末としていたTOBの実施期限を10月3日へと延長した。

ZFは8月上旬、ハルデックスを友好的なTOBで買収することで同社経営陣と合意した。ハルデックスに対しては当時、ルクセンブルクに本社を置く商用車部品大手のSAFホラントがTOBの意向を表明しており、ZFは白馬の騎士として対抗した格好だ。これを受けSAFがハルデックス買収を断念したことから、ZFのTOBは順調に進むとみられていた。

だが、クノールブレムゼがハルデックスを1株110クローナで買収する方針を今月上旬に打ち出したため、ZFは14日にTOB条件の変更。買い取り価格をクノールブレムゼと同じ110クローナへと引き上げた。また、クノールブレムゼがハルデックス株をすでに8.4%確保したことを踏まえ、TOBの成立条件を「90%超の株式確保」から「50%超の株式確保」へと大幅に引き下げた。さらに、自社保有分(4.18%)を含めハルデックスの資本21%以上を確保したことを明らかにした。

ZFはハルデックス買収に必要な独禁当局の承認をすでにすべて獲得しており、TOBに応じたハルデックス株主への支払いを10月10日にも開始できるとしている。クノールブレムゼは今月26日頃にTOBを開始するうえ、事業の重複が多いハルデックスの買収を独禁当局から承認されないリスクもある。ZFはこうした事情を踏まえ、独禁法上のリスクがなく支払いも速やかに行える自社のTOBに応じることのメリットをハルデックス株主に訴えている。

ただ、ZFの買い取り価格(120クローナ)はクノールブレムゼを5クローナ下回っており、ハルデックス株主がZFのTOBに応じるかは不明だ。これについて同社の広報担当者は「(クノールブレムゼの)新しい(TOB)提案は認知している。状況を慎重に検討したうえでじっくり結論を出した」と発言。総合的に判断すればZFの買収提案の方が株主にとって魅力的だとの見方を示唆した。

ハルデックスはZF支持を堅持

両社の新たなTOB提案を検討したハルデックスは19日、ZFによる買収を改めて支持することを明らかにした。買収提示額の低い企業の提案を受け入れるのは異例。ハルデックスはプレスリリースで、クノールブレムゼは独禁審査上のリスクが大きいという懸念を打ち消す具体的な材料を示していないと指摘した。ZFはすでに独禁審査を終了しているほか、事業分野が異なるハルデックスとシナジー効果を見込めることが強みとなっている。

自動車業界では自動運転が今後の勢力図を大きく左右する技術と目されている。ZFは同分野を急速に強化しており、昨年には運転者支援システムなどに強い米TRWオートモーティブを吸収合併した。自動運転で重要なセンサー、操舵装置、制御ソフトですでに高い競争力を持つ。商用車ブレーキが加わるとシステムサプライヤーになることができるため、ハルデックスを買収する。

クノールブレムゼはそうした流れが定着するとブレーキ市場での影響力が弱まることから、ZFによるハルデックス買収を阻止するために対抗TOBに打って出たもようだ。