最大の貿易相手は中欧4カ国、EU内での“齟齬”の深まりには懸念も

2017/11/01発行 No.1161号

記事分類:総合 - ドイツ経済ニュース

中欧の地域協力機構である「ヴィシェグラード・グループ」の加盟4カ国がドイツ最大の貿易相手となっている。これらの国はドイツに近いうえ、質の高い労働力を低コストで利用できることから、ソ連を中心とする共産圏が崩壊した1990年代初頭以降、製造業の工場進出が活発化したことが大きい。ただ、中欧諸国ではハンガリーのオルバン政権などポピュリズムの勢力が強く、欧州連合(EU)やドイツのリベラルな価値観への反発が根強いことから、経済界内にはEU内での政治的な“齟齬(そご)”が深まることへの懸念が強まっている。

ヴィシェグラード・グループはポーランド、チェコスロバキア、ハンガリーの3カ国がハンガリーのヴィシェグラードで1991年に開催した首脳会議で設立された。93年にチェコスロバキアがチェコとスロバキアに分離したことから、現在は4カ国で構成されている。V4と略称される。

V4は各国レベルでみると規模が小さく、最大のポーランドも人口は3,800万人とドイツの半分以下にとどまる。ドイツの貿易相手国ランキングではポーランドが7位、チェコが10位、ハンガリーが14位、スロバキアが19位となっている。

だが、4カ国を合わせると対独貿易総額は2,569億ユーロ(2016年)に達し、国別トップの中国を大幅に上回る(下のグラフ参照)。同総額の12年比の伸び率も31%と、中国(17%)、米国(20%)より高い。

製造業の人件費をみると、ドイツは1時間当たり38.7ユーロに達し、EUで4番目に高い。一方、ポーランドは7.7ユーロ、ハンガリーは8.2ユーロ、チェコは10.1ユーロ、スロバキアは10.6ユーロにとどまる。EU平均の26.4ユーロを大幅に下回ることから、ドイツメーカーは今後もV4向けの投資を積極的に行うとみられる。

唯一の懸念材料はV4で強まる民主主義的な価値からの乖離だ。EUは加盟希望国に対し普通選挙や法の支配、三権分立、人権尊重といった近代民主主義の価値の受け入れを93年のコペンハーゲン基準で義務づけており、V4も受諾したうえで加盟した。だが、ハンガリーのオルバン政権とポーランドのシドゥウォ政権は司法権と批判的なメディアを圧迫。欧州評議会の「法による民主主義のための欧州委員会(ヴェネツィア委員会)」やEUの欧州委員会の批判にもかかわらず態度を改めず、EU危機の一因となっている。オルバン首相とポーランドの実質的な権力者である与党「法と正義」のヤロスワフ・カチンスキ党首は、制度的には民主制だが実質的には自由が制限される「非自由主義的民主主義(illiberal democracy)」を信奉している。

チェコでは10月の下院選挙で富豪のアンドレイ・バビシュ前財務相(63)率いるポピュリスト政党「不満を抱く市民の運動(ANO)」が2位以下に大差をつけて勝利した。難民問題を受けてオーストリアとルーマニアがV4に接近していることもあり、経済界は中東欧諸国の“異質化”が一段と強まることを懸念している。国家間の政治対立や排外主義の高まりは国際的に事業を展開する企業の大きなリスク要因となるためだ。

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