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NOx削減資金を都市に迅速提供へ、メルケル首相が確約

2017年12月6日発行 No.1166号

ドイツのメルケル首相は11月28日、大気汚染が深刻な国内の約40都市の市長らと会談し、人体に有害な窒素酸化物(NOx)の削減資金を速やかに提供することを約束した。これらの都市はディーゼル車の走行禁止を来年2月に最高裁判所から命じられる恐れがあり、早急な対策を迫られている。メルケル首相は「明日から資金を提供する」と明言。自治体からの支援申請を連邦経済省の新設部署で迅速に処理することを確約した。

欧州連合(EU)加盟国はNOxの濃度を1立方メートル当たり40マイクログラム(年平均)以下に抑制することを2010年以降、義務づけられている。ドイツではベルリン、ミュンヘンなど計28の都市・地域で同規制を順守できない状況が続いていることから、欧州委員会は2月中旬、政府に最終警告書を送付した。順守に向けた対策が早急に作成・実施されなければ、ドイツを欧州司法裁判所(ECJ)に提訴する考えだ。

同ルールを根拠に環境保護団体が起こしている係争では7月下旬、欧州排ガス基準「ユーロ5」以下のディーゼル車を対象にシュツットガルトでの走行禁止を地元行政裁判所が言い渡した。他の大都市でも同様の係争が行われおり、最終的な司法判断は最高裁の連邦行政裁判所が来年2月22日に下すことになっている。走行禁止が言い渡される可能性を排除できない状況で、NOx基準を遵守できない都市の危機感は大きい。

この問題の打開に向けて政財界は8月初旬に会合(通称ディーゼル・サミット)を開催。同国の自動車メーカーはディーゼル車530万台のエンジン制御ソフト入れ替えと、旧型ディーゼル車を下取りに出して新車を購入する顧客に報奨金を支給するキャンペーンの実施を約束した。また、政府と自動車業界はNOx濃度が高い都市を支援するために「持続可能な都市モビリティ基金」を設立し、それぞれ2億5,000万ユーロの拠出を取り決めた。

独政府と州、基礎自治体が9月に開催した会合では、独政府が同基金への拠出額を5億ユーロ増やし7億5,000万ユーロとすることを確約しており、同基金の規模は当初計画の5億ユーロから2倍の10億ユーロへと拡大した。

当該都市はすでにNOxの削減計画を策定し、同基金から助成金を得るための準備を整えている。それにもかかわらず、資金を得られない状況が続いていることから自治体サイドが批判。今回の会合で迅速な資金提供が取り決められた。

外車メーカーは資金拠出を拒否

10億ユーロのうち4億ユーロは渋滞解消・緩和に向けた交通のデジタル化、3億5,000万ユーロは電気バスの購入支援、1億5,000万ユーロはディーゼルバスへの排ガス処理装置の装着に充てられる。

メルケル首相は10億ユーロでは十分なNOx削減効果を得られないとして、2019年以降も支援を行う意向を表明した。次期政権の課題として連立協議の対象とする考えだ。

自動車業界の拠出金2億5,000万ユーロは国内ディーゼル車市場でのシェアに基づいてメーカーが負担することが8月のディーゼル・サミットで取り決められた。独メーカーBMW、ダイムラー、VW、アウディ、ポルシェは拠出を確約。基金にはこれまでに1億6,000万~1億7,000万ユーロが払い込まれた。

ドイツ自動車工業会(VDA)やメルケル首相は合計のシェアが約35%に上る外国メーカーにも拠出を要求しているが、これまでのところ受け入れられていない。仏ルノーは、同基金は一国レベルの取り組みに過ぎないと指摘。仏グループPSAの広報担当者はディーゼル排ガス削減問題は国よりも高いレベルで取り組むべきテーマだとして、国際的な枠組みの必要性を強調した。

このため自動車業界が目標の2億5,000万ユーロを拠出できる見通しは立っておらず、VDAのマティアス・ヴィスマン会長は「外車メーカーを基金に取り込むことができなければ、不足額を埋める手立てはない」と懸念を示した。

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