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二大会派が連立交渉入りで合意、低所得層に配慮

2018年1月17日発行 No.1170号

独連邦議会(下院)の二大会派であるキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と社会民主党(SPD)は12日、政権交渉を開始することで合意したと発表した。5日間に及ぶ予備交渉で政策の大枠合意が成立したため。SPDの21日の党大会で承認が得られれば本交渉を開始して政権協定を締結する。CSUのホルスト・ゼーホーファー党首は遅くともイースター休暇(3月末から4月初旬)までに新政権を樹立したい考えを表明した。実現すれば、CDUのアンゲラ・メルケル党首を首班とする3度目の大連立政権(二大政党が樹立する政権)となる。ただ、SPD内には大連立に批判的な声が強く、成立するかどうかは微妙な情勢だ。

CDU、CSU、SPDの3党は7日から11日にかけて予備交渉を実施した。CDU/CSUが9月の連邦議会選挙後に小政党の自由民主党(FDP)、緑の党と行った政権交渉では、交渉内容が外部に大量に漏れ、合意実現の大きな障害となったことから、今回はかん口令を敷いて情報を統制。財政、年金、医療保険、難民などCDU/CSUとSPDの溝が大きい問題があったものの、最終的に合意にこぎ着けた。

社会保障分野では中道左派のSPDの要求を受けて、公的健康保険の料率を雇用者と被用者が折半負担するルールの復活を取り決めた。構造改革で導入された現行ルールでは保険料が労使折半部分と被用者単独負担部分からなり、料率は前者が14.6%(労使がそれぞれ7.3%負担)、後者が平均1.0%となっている。被用者の単独負担部分を廃止し料率を労使がすべて折半するルールが再導入されると、企業など雇用者側の負担は年に約50億ユーロ増加する見通しだ。

労使が折半する失業保険料については料率を現在の3.0%から0.3ポイント引き下げることを取り決めた。雇用の拡大で失業保険財政にゆとりがあるためだ。

予備交渉では公的年金受給開始時点の年金額が現役世代の手取り収入額の何パーセントに当たるかを示す所得代替率を2025年まで現在の48%に据え置くとともに、労使が折半する年金保険料の大幅上昇を回避することでも合意が成立した。また、年金保険料を35年以上、納付した就労者に生活保護を10%上回る「最低年金」を保障することを取り決めた。ただ、少子高齢化が今後、一段と進展するなかでこうした政策を実現するためには、財源の確保が不可欠であることから、議論を呼びそうだ。

極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」が躍進する大きな原因となった難民の問題に関しては、受入数を年18万~22万人に制限することを取り決めた。同20万人を上限とするCDUとCSUの10月の合意にやや柔軟性を持たせた格好。ジュネーブ難民条約で定義する難民に該当しないものの、帰国すると迫害の恐れがあるとして滞在が認められている「補完的保護」の享受者が呼び寄せる家族についても、月1,000人の上限枠を設定することで合意が成立した。難民受け入れの制限を強く求めるバイエルン州の地方政党CSUにSPDが歩み寄った格好だ。

欧州連合(EU)に関しては、英国の離脱で発生するEU予算の穴を相殺するためにドイツの拠出金を増やすことや、ユーロ加盟国の安定化に向けた基金の創設を支持することで合意した。発がん性の疑いが持たれている農薬「グリフォサート」については使用を大幅に制限することを取り決めた。

SPD左派などが大連立に反対

今回の合意に対しはSPDの左派と青年組織「青年社会主義者(JUSO)」は強く批判。JUSOは、本来は正面から対決すべき左右の二大政党が連立を組んで協力することは9月の選挙で有権者から「ノー」を突き付けられたうえ、批判的な議論の欠如につながりAfDの躍進を許したとして大連立反対キャンペーン「ノー・グロコ(グロコは大連立の略)」を大々的に展開している。SPDの地方支部ではザクセン・アンハルトとベルリンが連立に向けた本協議入りに21日の党大会で反対票を投じることを決議した。

ただ、SPDの重要な支持基盤である労働組合は大連立の樹立を支持している。CDU/CSUとの大枠合意は社会保障のほか、中・低所得層の税負担軽減、住宅や保育施設の拡充など社会的弱者に有利な取り決めが多く含まれているためだ。

カイザースラオターン工科大学のフランク・フェヒトナー教授の試算として経済紙『ハンデルスブラット』が報じたところによると、同合意が実施されると、低所得者の家計負担は大幅に軽減される。月収850ユーロ(支給額ベース)の単身世帯では社会保険料負担が28ユーロ減の147ユーロへと低下。年間の負担額は339ユーロも軽減される。月収1,500ユーロの単身世帯では年軽減額が117ユーロ、同3,500ユーロでも273ユーロにとどまる。

ドイツでは税よりも社会保険料負担が低所得層の大きな負担となっている。社会保険料の控除枠が所得税などよりも小さいためで、経済協力開発機構(OECD)や国際通貨基金(IMF)は低所得者の社会保険料負担軽減を以前から独政府に要求している。

政権交渉入りの是非を問うSPD党大会では16州の代表が計600票、党執行部が同45票を投じる。ザクセン・アンハルト州の持ち票は6票、ベルリン州も同23票にとどまるため、両州の反対票は大勢に大きな影響を与えないものの、反対派は精力的に動いており、執行部の危機感は強い。

仮に反対派が勝利すると、マルティン・シュルツ党首は引責辞任に追い込まれる可能性がある。また、過半数与党実現のメドが立たなくなることから、選択肢はCDU/CSUが少数与党政権を樹立するか、議会を解散し総選挙を行うかのどちらかに絞られる。公共放送ARD向けに世論調査機関インフラテスト・ディマップが実施した1月上旬の有権者アンケート調査では解散・総選挙の支持が前回(12月上旬)の45%から54%へと大きく上昇。少数与党政権の支持は51%から42%へと低下した。

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