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政権樹立の本交渉へ、SPD党大会で承認

2018年1月24日発行 No.1171号

独中道左派の大政党・社会民主党(SPD)は21日にボンで党大会を開催し、連邦議会(下院)の最大会派であるキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)との政権樹立に向け本交渉を開始することを賛成多数で決議した。ドイツでは昨年9月の連邦議会選挙からほぼ4カ月が経過しているにもかかわらず次期政権が成立しない異例の事態が続いているが、ようやく出口が見えてきた格好だ。ただ、SPDの決議では連立交渉入りへの反対票も多く、マルティン・シュルツ党首は厳しい姿勢で交渉に臨み予備交渉よりも多くの成果を獲得する意向を表明した。SPDは本交渉の結果についても党員投票で受け入れの是非を決めることから、交渉の結果次第では政権樹立が否決され、政治の混迷が深まる恐れもある。

21日の党大会では出席した642人のうち362人(56.4%)が政権交渉入りに賛成票を投じた。反対は279票で全体の43.5%を占めており、党内の意見は2つに割れている。

反対票が多かったのは二大政党が樹立する大連立政権への批判が強いためだ。SPDはCDUのアンゲラ・メルケル党首を首班とする政権にこれまでに計2期8年、参加したものの、有権者の支持率が下落し続けていることから、大連立への“嫌悪感”が強まっており、シュルツ党首は9月の選挙直後、下野方針を表明。CDU/CSUとの連立解消を打ち出した。

だが、CDU/CSUが小政党の自由民主党(FDP)、緑の党と行った政権の予備交渉が決裂したことから、過半数安定政権を実現するためにはCDU/CSUとSPDが大連立政権を再び樹立する以外に選択肢がなくなり、SPDは執行部の判断で今月7~11日にかけてCDU/CSUと予備交渉を実施。12日に本交渉入りで合意した。

21日のSPD党大会は同合意を承認するかどうかを決議するために開催された。同合意は社会保障政策分野で弱者に配慮した内容で、SPDの要求が少なからず反映されており、シュルツ党首は「予備交渉で多くの成果を獲得した」と強調。メルケル首相の下で3度目となる次期大連立政権は「これまでの延長線上のものとはならない」と述べ、社民色を強く出して大きく変化させることを確約した。

有期雇用規制など争点に

だが、党内には左派を中心に大連立への批判が根強く、反対派の急先鋒である青年組織「青年社会主義者(JUSO)」は、大連立反対キャンペーンを大々的に展開。党大会での態度を決めかねている代議員の取り込みを図った。

そうした緊迫のなかで大連立支持を決議できたのは、有力な党役員がシュルツ党首をサポートしたためだ。JUSOの元委員長で左派色の強いアンドレア・ナーレス院内総務(前労働・社会相)は「私は新たな選挙を恐れない」と前置きしたうえで、CDU/CSUとの予備交渉ですでに80%実現可能となった公約をわざわざ掲げて新たな選挙戦を行った場合、市民は一体どう思うだろうかと発言。「市民が投げかけるであろうこの質問が怖い」と述べ、大連立政権の樹立を拒否し議会を解散することは有権者の理解を得られないと強調した。本交渉ではCDU/CSUに「悲鳴を上げさせる」とも明言しており、この日の党大会で最大の拍手を獲得した。予備交渉の大きな成果を示したうえで、さらなる成果を本交渉で獲得すると訴えたことで、党の前向きな姿勢をアピールし、態度未定の代議員の一部を「ひとまず支持」の方向に傾かせたとみられる。

当初はCDU/CSUの少数与党政権にテーマ応じて閣外協力する路線を訴えていたマル・ドライヤー副党首(ラインラント・ファルツ州首相)も予備交渉で獲得した成果を念頭に本交渉入りの支持には「良い理由がある」と援護射撃を行った。ドライヤー副党首は党内で最も人気が高い政治家であり、党員への影響力は大きい。

公共放送ZDFの委託で世論調査機関ヴァーレンが実施した最新の有権者アンケート調査では、大連立政権樹立の支持が45%に上り、反対の36%を9ポイント上回った。SPD支持者では賛成が57%と過半数に上る。

ただ、「SPDは野党となるべきだ」との回答もSPD支持者で51%と高いことから、同党の支持者のなかには「大連立政権の樹立を本来は望まないものの、他に安定政権の可能性がないという消極的な理由から大連立を支持する」人が多いことがうかがわれる。

CDU/CSUはSPDの本交渉入り決議に歓迎の意を示した。ただ、SPDが予備交渉以上の成果を獲得しようとしていることを警戒。CDUのメルケル党首は本交渉をあくまで予備交渉の合意の枠内で行う考えを強調した。

SPDはCDU/CSUとの本交渉でまとめ上げる連立合意を承認するかどうかを党員投票で決定する。このため、本交渉で予備交渉以上の成果を獲得できないと大連立に否定的な見方が党内に広がり、否決される恐れがあり、交渉では厳しいやり取りが予想される。有期雇用規制、医療保険制度、難民受け入れ問題が大きな争点となりそうだ。

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