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政権協定が成立、キ教民・社同盟は社民党に大幅譲歩

2018年2月14日発行 No.1174号

ドイツ連邦議会の二大会派であるキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)と社会民主党(SPD)の3党は7日、政権協定を締結した。3党は今後、同協定の承認手続きを党内で実施する。順調に行けば3月前半に次期政権が成立する見通しだ。ただ、SPD内にはCDU/CSUとの連立への反発が強く、党員投票で政権参加が否決される懸念もある。SPDの党員投票は20日から3月2日にかけて実施。4日に結果が発表される。

3党の政権協定にはバイエルン州の地方政党であるCSUと、中道左派のSPDの要求が強く反映されている。

CSUは姉妹政党CDUの党首であるメルケル首相が決めた2015年の難民大量受け入れを受けて保守層を中心に有権者の支持を喪失した。このためメルケル首相に対し早い時点で難民受け入れの抑制を強く迫ったものの、昨年9月の連邦議会選挙で劣勢を跳ね返すことができず、新興極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」に有権者を多く奪われた。今年10月には足元のバイエルン州で州議会選挙が行われることから危機感が強く、今回の政権協定には難民受け入れ数を最大で年18万~22万人にとどめるなどの抑制策を盛り込むことに成功した。難民問題を所轄する連邦内務相にはCSUのホルスト・ゼーホーファー党首が自ら就任する予定だ。

SPDは3党のなかで最も多くの要求を政権協定に反映させることができた。カールスルーエ工科大学からのスピンオフ企業であるシングスシンキングが人工知能を用いて行った調査によると、同協定の内容の70%はSPDの選挙綱領に合致しているという。

SPDが多くの要求を貫徹できた背景には、連邦議会選後に打ち出した下野方針からCDU/CSUとの連立政権継続方針へと転換したことに対し、党内から強い批判が出ているという事情がある。SPDの党員投票で連立反対派が勝利して次期政権を樹立できなくなるという最悪のシナリオを避けるために、CDU/CSUは大幅な譲歩を余儀なくされた。

SPDは同党が伝統的に重視する社会保障・労働政策と、欧州連合(EU)政策で主導権を握る見通しで、これらの政策のカギを握る労働・社会、外務、財務の閣僚ポストを獲得した。

労働・社会保障分野では有期雇用規制の強化や、フルタイム社員が期間限定でパート勤務する権利の保障、公的年金の給付水準維持などを政権協定に盛り込むことに成功した。企業負担は増える見通しのため、財界からは批判が出ている。

欧州通貨基金で

3党が予備交渉合意を修正

EU政策ではEU予算とは別にユーロ圏共通の予算を創設することや、ユーロ圏の金融安全網である欧州安定メカニズム(ESM)を欧州議会の統制を受ける欧州通貨基金(国際通貨基金の欧州版)へと発展させることが盛り込まれている。これはフランスのマクロン大統領が打ち出したEU改革構想と同じ方向の政策方針だ。

EU改革に絡んだこれらの方針案はすでに1月中旬に成立した3党の予備交渉合意に盛り込まれていた。文面は抽象的な用語が多く、うっかりすると読み落としかねないが、ここにはドイツがEU政策を大きく転換する可能性が内包されていた。

ユーロ圏には加盟国の財政赤字を他の加盟国が負担しない「非救済(ノー・ベイルアウト)」原則がある。欧州債務危機で財政が悪化したギリシャなどの債務をドイツなど他の加盟国が一切、引き受けなかったのはこのためだ。

これに対しては南欧の財政悪化国を中心に批判が根強いものの、ドイツは拒否の姿勢を取り続けてきた。

だが、EU共通の予算を創出したり、欧州通貨基金を欧州議会の統制下に置くことは、財政悪化国に対する財政支援となり、ノー・ベイルアウト原則の実質的な放棄につながる恐れがある。

3党の予備交渉合意を読んだフランクフルト大学金融研究センターのオトマール・イッシング所長(元欧州中央銀行理事)は『フランクフルター・アルゲマイネ』紙への寄稿論説でこの問題を指摘。欧州通貨基金の権限を欧州議会に引き渡せば、ドイツをはじめとするユーロ加盟国は同基金の用途に対する拒否権を行使できなくなり、ユーロ圏はドイツなどの財政安定国から財政悪化国に資金が一方的に流出する「移転連合(トランスファーユニオン)」へと変質すると警鐘を鳴らした。そうした事態が現実になると、ドイツなどの財政安定国でEUに対する拒否感が強まるため、加盟国間の溝の深まりや極右勢力のさらなる躍進をもたらし、平和で安定した欧州を実現するというEUの根本的な目標が遠のくとしている。

ユーロ圏共通の予算については、創設不要との立場を示した。EUの景気浮揚に向けて2015年に設立された「欧州戦略投資基金(EFSI)」を活用すれば、経済が低迷するユーロ加盟国の投資を活性化できるとみているためで、既存のEU予算、EFSIに加えてユーロ圏独自の予算を作る必要性はないとしている。

有力なエコノミストであるイッシング所長の批判は3党の政権協議に大きな影響を与えており、政権協定のESM・欧州通貨基金に関する文章の最後には「加盟国議会の権利は(欧州議会の統制を受ける欧州通貨基金が創出されても)変わることなく保持される」との一文が付け加えられた。短い一文だが、その意味は大きい。

SPDは党首交代へ

SPDのマルティン・シュルツ党首(62)は政権協定締結直後に辞意を表明し、13日に辞任した。後任には4月22日の党大会でアンドレア・ナーレス院内総務(47)が選出される見通しで、この間はハンブルク州のオーラフ・ショルツ首相が暫定的に党首を務める。ナーレス氏が党首になれば、150年以上の歴史を持つ同党で初の女性党首が誕生することになる。シュルツ党首は昨年、就任したばかりだが、すでに求心力を喪失しており、SPDは党を活性化するために党首の交代が避けられない状況となっていた。

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