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ハルツ4は不当な低水準か、フードバンクの受け入れ制限きっかけに論争

2018年3月21日発行 No.1179号

経済競争力の回復に向けた構造改革の一環で13年前に導入された「求職者基礎保障給付金制度(通称ハルツ4)」をめぐる論争が活発化している。きっかけとなったのは、品質に問題がないにもかかわらず賞味期限などの問題で販売できなくなった食品を、スーパーやメーカーから譲り受けて生活困窮者に配給する非営利団体(NPO)であるターフェルが実施した外国人の新規受け入れの一時的な凍結。堅調な経済が長期化するなか、かつてほど注目されなくなっていた貧困問題に突然、スポットライトが当たった格好だ。

ハルツ4はドイツを「欧州の病人」から「欧州経済のけん引車」へと変えた構造改革「アジェンダ2010」の主要政策として2005年1月に導入された。長期失業者と就労能力のある生活保護受給者を統合したうえで、給付水準を低く設定した新設の求職者基礎保障給付金を支給。就労を促すというものだ。

同手当は主に、食費や娯楽費、通信費など日常生活に必要な支出項目の合計である一般給付金(Regelsatz)と家賃・暖房費給付金で構成されており、合計の給付額は世帯の構成人数や子供の年齢、居住地の家賃相場によって異なる。一般給付金は現在、単身者やシングルマザーで月416ユーロ、夫婦で1人374ユーロ、14~17歳で316ユーロ、6~13歳で296ユーロ、6歳未満で240ユーロとなっている。

一般給付金のなかで最大の項目は食品で、単身者の場合で月145.04ユーロとされている。1日当たり4.83ユーロとなる計算で、受給者は切り詰めた生活を送ることになる。

ターフェルはドイツのフードバンクで、1993年にベルリンで誕生した。95年に非営利法人(全国組織)を設立。現在は国内各地に計934加盟団体があり、2,100カ所強のショップを運営している。運営に協力するボランティアは6万人に上る。

ショップを利用できるのはハルツ4の受給者や年金額が少ない高齢者などの低所得者で、各地の加盟団体に登録する必要がある。登録した人は1ユーロなどの低価格で食料を受け取ることができる。全国で150万人が利用している。

独西部エッセンのターフェルは外国人の新規登録受付を暫定的に凍結することを昨年12月に決定し、1月10日から実施した。ドイツが15年に難民を大量に受け入れた結果、同ターフェル利用者に占める外国人の割合が75%に達したためで、ドイツ人と外国人の比率が「適正な水準」に回復するまでは新規受け入れをドイツのパスポート保有者に限定することにした。

この事実が2月22日のメディア報道で広く知られるようになると、同ターフェルに対する批判が殺到。メルケル首相もそうした区別は好ましくないと発言した。

大世帯ほど就労意欲を持ちにくい仕組み

エッセン・ターフェルのイェルク・ザルトーア会長はこれに対し、外国人の若者が他の利用者を肘で押しのけたり、荒っぽい言動を取ることから、高齢女性やシングルマザーが不安を感じて利用を見合わせるようになったことが、今回の決定の理由だと説明した。それとともに、最低限度の生活を保障するのは国家の義務だと指摘。ターフェルの利用者が減らないのはその義務が十分に果たされていないためだと政府を批判した。

この見解は左派や慈善団体に支持されており、左翼党などはハルツ4の給付水準を30%引き上げるよう要求している。

これに対し、保守派のイェンス・シュパーン保健相(キリスト教民主同盟)は、「給付額は多い方がいいのだろうが、これらの給付は他の人々が収める税金で賄われていることを忘れてはならない」と強調。また、給付額は法律で厳密に定められた基準に従って算出されており、飢え死にした受給者は一人もいないと述べ、「ハルツ4が意味するのは貧困でなく、貧困に対する我々の連帯共同体の回答だ」との認識を示した。

一方、地方自治体の全国組織であるドイツ郡会議のラインハルト・ザーガー会長は、ハルツ4をめぐる議論の焦点が支給額の水準に集中していることに懸念を表明。重要なのはむしろ、受給者が自らの労働で生計を立てるようになることだと立場を示した。

背景には子持ち世帯では受給水準が高く、正規の就職をすることに対するモチベーションを受給者が持ちにくいという事情がある。

子供が2人いる4人家族では一般給付金と家賃・暖房費給付金を合わせた平均受給額が月1,928ユーロに上る。税金と社会保険料負担の軽減を目指す全国納税者連盟(BdSt)によると、この水準の手取り収入を親子4人の勤労者世帯が得るためには、支給額ベースで2,540ユーロの収入を得る必要がある。税金と社会保険料を差し引かれるためだ。ハルツ4の受給額は世帯の規模が大きければ大きいほど増加し、子供3人の5人世帯では2,381ユーロに上る。親子5人の勤労者世帯がこの額の手取りを確保するためには支給額ベースで3,300ユーロの収入を得なければならない。

汗水たらして働かなくても勤労者と同じレベルの生活が保障されていることから、あえて就職しない受給者は少なくない。ハルツ4の支給額を引き上げると、就労意欲は一段と弱まると予想される。

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