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「ディーゼル車に未来あり」、NOx大幅削減技術をボッシュが開発

2018年5月2日発行 No.1184号

自動車部品大手の独ボッシュは4月25日、ディーゼル車が排出する窒素酸化物(NOx)の量を大幅に削減する技術を開発したと発表した。顧客企業から受注があればすぐにでも量産できるとしており、排ガス不正問題と走行制限論議をきっかけとするディーゼル車の需要減に歯止めがかかる可能性が出てきた。フォルクマー・デナー社長は「ディーゼルには未来がある。排ガス問題は間もなく議論の対象でなくなる」と言い切った。

同社は燃料噴射技術の改良、新しいエアマネジメントシステム、排ガス処理温度の最適化を通してNOx発生量の大幅引き下げに成功した。市内と郊外、高速道路の走行を組み合わせた路上走行試験(RDE)でのNOx 排出量は走行1キロメートル当たり13ミリグラムにとどまった。これは現在の許容上限値である同168ミリグラムの13分の1に過ぎず、2020年から適用される同120ミリグラム規制に比べても9分の1にとどまる。

NOxの排出削減ではこれまで、運転手の走行スタイルと排ガスの温度が大きな障害となっていた。ボッシュは特にこの点に照準を合わせて新技術を開発。走行スタイルに起因するNOxの大量発生については、運転スタイルが激しければ激しいほど排ガスがダイナミックに循環するエアマネジメントシステムを開発することで抑制に成功した。

NOxの発生を軽減するためには排ガスの温度が200度を超えている必要がある。市内走行では200度に達しないことが多いため、NOxの排出量が増えやすい。同社はこの問題については排ガス処理装置をエンジンのすぐ近くに配置し温度を常に200度超に保つことで解決を図った。

今回開発した技術は既存の技術を改良したものであるため、新たな部品は必要なく、追加コストも小さい。デナー社長は1台当たり100ユーロ未満にとどまることを明らかにした。同技術ではまた、燃費が悪化し二酸化炭素(CO2)の排出量が増えることもないという。

今後は人工知能(AI)を利用してNOxの排出量をさらに引き下げていき、CO2を排出する以外は環境に負荷をかけない究極のエンジンを開発する目標だ。

ディーゼル分野の雇用5万人

欧州の自動車業界ではガソリン車に比べてCO2排出量が少ないディーゼル車を長年、地球温暖化抑制のカギを握る“クリーンな”車両として積極的な売り込みを行ってきた。この結果、ディーゼル車の利用は拡大。ドイツではガソリン車の新車登録が08年の169万台から15年には161万台へと4.7%減少したのに対し、ディーゼル車は同12.5%増の153万台へと伸び、新車に占める割合は48.0%に達していた。順調に推移していればガソリン車を抜いていた可能性がある。

だが、15年9月にフォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正問題が発覚したことで状況は一転した。シュツットガルトなどの大都市で欧州連合(EU)のNOx規制を遵守できない主な原因が、自動車メーカーによるディーゼル車排ガス値の不当な操作にあることが明らかになり、市内乗り入れ制限が現実味を帯びてきたためだ。独新車登録に占めるディーゼル車の割合は16年に前年比2.1ポイント減の45.9ポイントへと低下。17年には7.1ポイント減の38.8%と下降のスピードが速まった。下落傾向は現在も続いており、今年3月のシェアは31.4%にとどまった。

自動車業界の危機感はメーカー、サプライヤーを問わず大きい。特にボッシュはディーゼル関係の雇用規模が5万人(全体:40万2,000 人)に上るうえ、同分野の生産設備を他の分野に振り向けることもほとんどできないことから、ディーゼル車の需要急減は事業の縮小と大量解雇につながる恐れがある。同社はそうした事態を回避するために、計100人強のプロジェクトチームを立ち上げ、今回の技術開発に成功した。

NOx規制の強化を受けて小型ディーゼル車は採算を取りにくくなり車種の減少が予想されるもの、中型以上のモデルでは採算を取りやすいことから、ディーゼル車の需要が拡大へと転じればボッシュはディーゼル事業を安定的に継続し、エンジン車から電動車への移行にスムーズに対応できる見通しだ。

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