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欧州委が独を提訴、NOx規制違反で

2018年5月23日発行 No.1187号

ディーゼル車を取り巻く環境がドイツで一段と厳しさを増してきた。欧州連合(EU)の欧州委員会は窒素酸化物(NOx)の濃度規制遵守に向けた対策が不十分だとしてEU司法裁判所(ECJ)にドイツを提訴。同国の最高である連邦行政裁判所はディーゼル車の走行禁止を認めた2月の判決の判決文を18日に公開し、走行禁止措置を即時導入できることを明らかにした。独北部の大都市ハンブルクはこれを根拠に、ディーゼル車の走行を一部の道路で禁止する意向だ。

欧州委員会は17日、EUの大気汚染規制への違反を理由にドイツをECJに提訴したことを明らかにした。遵守に向けた措置を取るよう要求してきたが、十分な措置が取られなかったことから裁判へと踏み切った。同国のほか、フランス、英国、イタリア、ハンガリー、ルーマニアも提訴している。

EU加盟国はNOxの濃度を1立方メートル当たり40マイクログラム(年平均)以下に抑制することを2010年以降、義務づけられている。ドイツではベルリン、ミュンヘンなどの都市・地域で同規制を順守できない状況が続いており、昨年は計66カ所で違反が確認された。

欧州委は違反が恒常化している状態を問題視し、EU法違反調査手続きを2015年に開始。昨年2月には政府に最終警告書を送付し、順守に向けた対策が早急に作成・実施されなければ、ECJに提訴する意向を示していた。

NOxはディーゼル車が主な排出源となっている。このため環境保護団体はNOx濃度が高いシュツットガルトやデュッセルドルフなどの都市でディーゼル車の走行禁止措置を導入するよう要求して提訴した。これを受けて走行禁止が現実味を帯びてきたことから、政府は昨年、NOx排出削減に向けてディーゼル車エンジンのソフトウエアを再インストールすることや、都市の大気浄化に向けた支援策を国内の自動車メーカーとの間で取り決めた。だが欧州委は、これらの措置では濃度を十分に引き下げることができないと判断し、提訴に踏み切った。

これに対しドイツのメルケル首相は、NOx規制違反の都市が昨年は減少したことを指摘。同国の都市の大気汚染は「類例のない」支援策の効果で改善に向かっているとして更なる措置を取る考えがないことを明らかにした。ソフトの入れ替えよりもNOx排出削減効果が大きいとされる部品(ハード)レベルの修理をメーカーに義務づけることについても、自動運転車や電動車向けの投資に支障が出るとして否定的な立場だ。

個々の道路の走行禁止は即時可能

連邦行政裁判所は2月、西南ドイツのシュツットガルト市と西部のデュッセルドルフ市の大気浄化策をめぐる係争で、他に手段がない場合はディーゼル車の走行禁止を認める判決を下した。今回公開された判決文には、個々の道路を対象に欧州排ガス基準「ユーロ5」以下のディーゼル車の走行を即時禁止できることが明記。一定地域全体(ゾーン)の走行禁止についても車両の環境性能によって時期をずらしながら段階的に導入することが認められている。ユーロ5対応ディーゼル車のゾーン内走行禁止措置は早ければ来年9月から実施できる。

ディーゼル車走行禁止に実効性を持たせるためには走行可能な車両と禁止車両を見分けるためのシールの導入が必要不可欠だとの指摘がある。車両の環境性能に応じてすでに緑・黄・赤の3種類のシールがあることから、新たに「青色シール」を導入すべきだとの意見だ。

青色シールを巡っては政府内の意見が統一されていない。中道左派の社会民主党(SPD)が導入を求めるのに対し、メルケル首相が属する中道右派のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)は否定的な立場を崩さない。

連邦行政裁はこの問題について今回の判決文のなかで、青色シールがなくても車両のコントロールは可能だとの見解を示した。スピード違反取締の際のように、警察官が自動車登録証明書を提示するよう運転手に要求すれば良いとしている。

ハンブルクの走行禁止は2カ所

ハンブルク市(州)は同判決文の公開を受けて、ディーゼル車の走行禁止区間を今月中にも設定する意向だ。ディーゼル車の走行禁止は同国で初めて。

走行禁止の対象となるのはマックス・ブラウアー通りの一部区間(580メートル)とシュトレーゼマン通りの一部区間(1.7キロメートル)で、ユーロ5以下のディーゼル乗用車とトラックは一部の例外を除いて走行できなくなる。すでに数日前から標識の設置作業が行われている。

ハンブルク州政府は走行禁止を4月にも導入する方針を2月の連邦行政裁判決時点で表明していたが、判決文が公表されなかったことから、実施を見合わせてきた。

一方、シュツットガルトの地元州であるバーデン・ヴュルテンベルクのヴィンフリート・ヘルマン環境相は14日、同市の大気浄化策をディーゼル車の走行禁止を回避する方向で策定する方針を明らかにした。走行禁止が仮に避けられない場合でも禁止措置を来年8月31日以前に導入することはないとしている。

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