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メルケル首相がEU改革案を提示、ユーロ圏共通予算は規模小さく

2018年6月6日発行 No.1189号

ドイツのメルケル首相(キリスト教民主・社会同盟=CDU/CSU)は3日発行の日曜版『フランクフルター・アルゲマイネ(FAS)』紙掲載のインタビューで、欧州連合(EU)の改革に向けた考えを表明した。仏マクロン大統領のEU改革構想に対するドイツ側の回答で、仏大統領府は「欧州の主権のすべての問題で独首相はフランスの見解に近づいている」と歓迎の意を示した。両国は今後、意見の調整を進め6月末のEU首脳会談までに共同の改革案をまとめ上げる考えだ。

マクロン大統領は昨年9月のソルボンヌ大学での講演で、EUの統合深化に向けた機構改革案を発表した。英国のEU離脱決定、ポピュリズムの台頭などで揺れるEUの結束強化を目指したもので、EU予算とは別にユーロ圏共通の予算を創設することや、債務危機に陥ったユーロ加盟国に緊急融資を行う欧州安定化メカニズム(ESM)をEU版の国際通貨基金(IMF)である欧州通貨基金(EMF)へと発展させることなどを提唱した。

メルケル首相は原則支持の意向を示していたものの、昨年9月に行われた連邦議会(下院)選挙後の組閣作業が難航・長期化したことから、具体的な回答を提示できないでいた。

同首相はユーロ加盟国間の経済格差是正に向けてユーロ圏共通の予算を創出するというマクロン大統領の構想に改めて支持を表明した。ただ、幅広い分野への資金投入を念頭に域内総生産比3%規模の巨大な予算を想定する同大統領と異なり、用途を技術革新や構造改革の支援など長期の競争力強化に役立つ分野に制限しているうえ、規模も「百億ユーロのケタ台の前半」と比較的小さく抑える考えだ。同予算の導入についても、段階的に進めたうえで効果を事後的に検証する必要があるとしており、所期の効果が得られない場合は見直す可能性を示唆している。

マクロン大統領が唱えるユーロ圏共通予算を統括する財務相職の創設については言及しなかった。メルケル首相が想定する同予算は規模と用途が限られることから、ユーロ圏独自の財務相を不要と考えているもようだ。

「融資は加盟国議会の承認が必要」

EMFについてはESMにない新たな融資の枠組みを創設することを提唱した。ESMでは財政危機に陥ったユーロ加盟国が支援を受けるためには◇ユーロ圏全体の危機に発展する恐れがある◇支援を受ける加盟国は財政健全化に向けた取り組みについて監視されることを受け入れる――の2要件を満たしていなければならない。また、融資は長期のものに限られ、柔軟性に欠ける。

メルケル首相はこれを踏まえ、外的なショックがきっかけで危機に陥った加盟国に5年程度の比較的短い融資枠を供与することを提唱した。具体例として、英国のEU離脱で打撃を受けると予想されるアイルランドへの適用を挙げた。

ただ、同融資の資金総額は「百億ユーロのケタ台」で、ESMの資金総額(現在7,050億ユーロ)に比べると大幅に少ない。また、融資額には制限をつけ、完済を前提条件とする考えだ。EMFの意思決定についても、加盟国の予算権限が掘り崩されないようにするため、各国議会の承認がなければ融資を行えないルールが必要不可欠だとの認識を示した。

メルケル首相がマクロン構想に理解を示しながらも、ユーロ圏共通予算とEMFに慎重な姿勢を示す背景には、ユーロ圏がドイツなどの財政安定国から財政悪化国へと資金が一方的に流出する「移転連合(トランスファー・ユニオン)」へと変質することへの警戒感が国内で強いという事情がある。財政悪化国への移転がその場しのぎの景気対策に投じられる結果、経済競争力の強化に向けた構造改革が先送りされることへの批判的な見方もドイツでは強い。こうした事情を背景に、同首相が属する中道右派の与党CDU/CSUからはけん制が出ており、与党の支持を得るためにも明確な“歯止め”を示さなければならない状況だ。ドイツ以外の財政安定国の利害・立場を配慮する必要もある。

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