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2023/11/17

ドイツ経済ニュース速報

製薬大手イーライリリーが独に工場建設

製薬大手の米イーライリリーは17日、独西南部のアルツァイに工場を建設すると発表した。ドイツはエネルギー価格の高騰や社会の高齢化に伴う専門人材不足などを背景に産業立地競争力の先行き懸念が強まっていることから、注目を集めている。ベルリンで開催された記者会見にはハーベック経済相、ラウターバッハ保健相が参加。ハーベック氏は「(イーライリリーの工場)設置決定は製薬・産業拠点としてのわが国の魅力に対する企業の信頼を示すものだ」と強調した。 イーライリリーは25億ドルを投じて新工場を建設する。同社がドイツに生産拠点を設置するのは初めて。2024年に着工し、27年から操業を開始する計画だ。2型糖尿病と肥満症の治療薬を生産する。新規雇用1,000人を見込む。 エドガルド・ヘルナンデス副社長は良好な製薬インフラの存在が選定の決め手となったことを明らかにした。人材についても十分な人数を確保できると予想している。仏東部のフェーガースハイム工場に近いことから業務上の相乗効果を見込む。 アルツァイは伝令RNA薬の有力企業であるビオンテックの本社所在地マインツに近い。この事情も今回の決定を後押しした可能性がある。 肥満症治療薬の需要は急速に拡大しており、同分野の新薬「ウゴービ」を持つデンマークのノボ・ノルディスクは先ごろ、生産能力拡大に総額420億デンマーク・クローネ(約56億ユーロ)を投資する計画を明らかにした。投資銀行ゴールドマン・サックスによると、世界市場規模は30年までに現在の60億ドルから1,000億ドルに拡大する見通しだ。 イーライリリーの2型糖尿病治療薬「マンジャロ」は米国と欧州連合(EU)で承認済み。肥満症治療薬「ゼプバウンド」も米国ではすでに承認を受けた。EUでも欧州医薬品庁(EMA)が承認勧告を出していることから、欧州委員会が承認すれば市場投入できるようになる。 イーライリリーは今回、新薬の開発を加速するためドイツでライフサイエンス、バイオテクノロジー分野のスタートアップ・エコシステムに最大1億ドルを投資することも明らかにした。