ニーダーザクセン州のクリスティアン・ヴルフ首相は地元経済や雇用のために日々、奮闘している。昨年倒産した同州の自動車OEMメーカーのカルマンが最終的にフォルクスワーゲン（VW）に買収され、何千人もの雇用が維持されたのは同首相の働きかけによるところが大きい。昨春に訪日した際は三洋電機や東芝を訪れ、バッテリー工場の誘致を働きかけたという。
\州民の第1人者にふさわしいこのヴルフ首相が21日の州議会で謝罪答弁を行い、注目を集めた。
\いったい何をしたのかと言うと、家族旅行のフライトで航空会社から便宜を受けていたのである。週刊誌『シュピーゲル』が16日オンライン版ですっぱ抜いたもので、州内閣官房はその2日後に事実を認めた。
\それによると、首相一家は昨年のクリスマス休暇をフロリダで過ごすため、エア・ベルリンのフライトチケットを5月に購入した。首相夫人がそのことをパーティの席で同社のフーノルト社長に話したところ、エコノミークラスからビジネスクラスにグレードアップするとの申し出があったため、これを受け入れたとのこと。プライベートの旅行であるため首相に護衛は付かず、フーノルト社長はビジネスクラスの方がセキュリティが高いと考え、座席に空きがあればという条件で申し出を行ったという。
\民間人であればこうした便宜は問題にならないだろうが、政治家は全体の奉仕者であるため、それを損なう恐れがある行為は厳に慎まなければならない。同州の閣僚法には「任期終了後も含め職務に絡む便宜や贈答品を一切受け取ってはならない」と規定されており、違法性は明らかである。首相自身も答弁で、同法に抵触したとの認識を示した。
\ただ、「弁解は一切しない」と述べた点は立派である。ライバル政党・社会民主党の院内総務は州議会で「首相の率直さは認める」と発言した。ビジネスクラスとエコノミークラスの差額3,000ユーロはすでに支払いを済ませており、野党は最左派の左翼党を除き追及しない方針だ。
\それにしても今回の件で意外だったのは、州首相であるヴルフ氏がエコノミークラスを予約していたことである。『フランクフルター・アルゲマイネ』紙によると、首相の月給は約1万4,000ユーロと高く、ビジネスクラスを利用しても家計の大きな負担になるとは思えない。私生活ではかなりの倹約家と見受けられる。
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