ポーランド政府は4月26日、欧州石炭最大手で国有のコンパニア・ヴェングロヴァ(KW)の存続を決定した。国有エネルギー3社と政府系投資基金、石炭販売会社の出資で合計24億ズロチ(約5億4,600万ユーロ)を調達し、経営再建に充てる。ただ、経費削減の規模が小さいことや、石炭価格の低迷などを理由に、財務改善の可能性を疑う声が業界専門家の間にあがっている。
KWは新会社「ポーランド鉱業グループ(PGG)」に改組される。出資額はエネルギー会社のPGE、エネルガ、PGNiGがそれぞれ5,000万ズロチ、企業投資基金(FIPP)が3億ズロチ、産業開発基金のTFシレジアが4億ズロチ、石炭販売のヴェングロコークスが2億1,700万ズロチ。
また、国営銀PKO BP、開発銀BGK、国営保険PZU傘下のアリオール銀行(Alior Bank)と、サンタンデール銀、BNPパリバの現地子会社およびヴェングロコークスが合計10億4,000万ズロチの社債を引き受ける。5銀行が購入する6億1,550万ズロチのうち、3億700万ズロチは2019~23年、残りは26年の償還となる。
KW経営陣と労組は4月19日、2年間のボーナス減額(年収の7.3%)で合意した。しかし、経費削減幅は2億3,000万ズロチに過ぎず、85億ズロチに上る巨大債務を抱える新会社が経営をどう立て直していくのか、具体的な道筋は見えない。
石炭生産国のポーランドは電力の90%を石炭に頼っている。今回の措置は二酸化炭素(CO2)排出削減を目指す欧州連合(EU)の方針と真っ向から対立し、時代に逆行すると批判されている。
ポーランドの炭鉱は採掘が進んで深度が増し、経費がかさんでいる。加えて石炭相場は今年に入って数年来の安値を記録しており、KWの経営に深刻な打撃を与えている。同社は昨年、過去最悪の9億3,000万ズロチの赤字を計上した。(1PLN=28.18JPY)