難民対策で「自警団」

中東やアフリカからの難民受け入れに強い抵抗を示している東欧で、一般市民が「自警団」を組織して不法入国者を取り締まる動きが広がっている。参加者は「不法入国者による盗難、殺人などの犯罪から国民を守る」、「イスラム教の侵入を阻む」といった理由を挙げる。警察など当局も容認しており、難民に対する暴力などが横行しているもようだ。

オーストリアの音頭取りで、ギリシャからバルカン半島を北上する「バルカンルート」が閉じられて以来、入国する難民の数が急増したブルガリアでは、トルコ国境地域を中心に「自警団」が組織された。その一つ、「愛国者」を率いる解体事業者、ディンコ・ワレフさん(29)はメディアで英雄扱いされ、ボリソフ首相も初めは「国境警備隊を助ける動きを歓迎」とコメントしていた。

しかし、ある「自警団員」がネットに投降した画像で難民が腹ばいで後ろ手に縛られ、怒号を浴びせられる様子が映り、人権団体が抗議。容疑者が警察に逮捕される事態となっている。他にも、難民自身から「警察官に殴られ、現金と電話を取り上げられた」など被害を告発する声が出ている。

ハンガリーでは極右政党「ヨッビク」に近い人物を中心に「自警団」が組織されている。公には「ヨッビクとは関係ない」としているが、同党系の民間武装団体で現在は活動が禁止されている「ハンガリー防衛団」の元隊員や、地元党組織の大物活動家などが関わる。

西部ジュールの「自警団」はパトロール中、近隣の収容施設に住む難民に「職務質問」をし、バス停まで「送っていく」という。また、行儀作法を守るよう「今度女の子に口笛を吹いたりしたら、豚のように掻き切ってやる」と警告したと得意になる隊員もいる。

スロバキアでは極右政党の「我々のスロバキア(LS-NS)」がこの春、「難民が悪さをしないように」電車パトロールを始めた。また、いざという時に「白人の多数派を守れるよう」民間武装団体を組織すると発表している。

東欧地域に共通しているのは、実際に滞在している難民の数が非常に少ないことだ。その中で、排外的傾向の強い極右が非現実的な「難民像」を描いて不安をあおり、社会的弱者を中心に支持を広げている。

ただ、問題は東欧に限らない。フランスの「国民戦線」や、英国の「英国独立党」、ドイツの「ドイツのための選択肢」の例をみるように、外国人や移民系の国民が暮らす国々でも右傾化は否定できない事実だ。

欧州には欧州統合の進行、経済のグローバル化に伴って貧しくなった人が数多く存在する。既成政党に幻滅するとともに、今の生活から脱出したい弱者が単純な「解決策」を掲げる右派になびいている様子が見える。

結局のところ、難民も「反難民」支持者も弱い者同士ということなのではないだろうか。その根本の解決なしには、難民も排外主義もなくならない。

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