高齢化と国家債務~ロシア

高齢化が進むロシアに米格付大手スタンダード&プアーズ(S&P)が警鐘を鳴らしている。現在のシステムが継続したと仮定した場合、高齢化に伴う歳出(年金・医療費など)は現行の国内総生産(GDP)比13%から2050年までに19%へ膨らむ。その結果、同年の国家債務はGDP比で262%に達するというのだ。

プーチン大統領はそもそも、国家債務の削減に力を入れていた。国家債務のGDP比は就任当初(2000年)の60%弱から2008年には7.5%まで圧縮した。以来、確かに債務は増えているものの、現在でも18%と世界でも国家債務の少ない国の一つだ。

しかし、1950年代末の団塊世代が退職年齢を迎え、年金生活者の数が大幅に増えるのに対し、これから働き始める1990年代生まれの数はずっと少ない。年金受給開始年齢を引き上げるなどの制度改革を実施しなければ負担が増え続ける。

さらに現在、ロシア経済は原油安と欧米制裁による資金調達難で苦しい状況が続いている。プーチン大統領が不景気時に備えて2つの国家基金に貯めたお金は来年までに底をつく見通しだ。

しかし、今年9月の議会選挙、2018年の大統領選挙を控え、増税や年金制度改革など国民の不評を買うような措置が近く実施されるかどうかには疑問符が付く。

高齢少子化は人事ではない。S&Pはロシアに対してではなく、ほかに57カ国についても同様の試算を行った。2050年の国家債務のGDP比が250%を超えると予想された国には日本も入っている。

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