ロシアの武器メーカー、カラシニコフ社が事業の多角化に乗り出している。世界各地の紛争地域で最も普及するライフル銃「AK-47」で知られる同社は、軍用ライフルから民生用の銃器に重点を移すと共に、狩猟用ナイフなどのサバイバル製品や衣料などの販売にも乗り出している。背景には模造品の普及による価格低下や、ウクライナ危機に伴う西側の制裁措置で市場が縮小したことなどがある。同社はブランドイメージを確立するためロゴを設定するなど新しい試みも始めている。
同社の事業多角化を進めるのは現最高経営責任者(CEO)のアレクセイ・クリヴォルチコ氏。同CEOはアンドレイ・ボカレフ氏と共に2014年に同社の株式49%を取得した。カラシニコフ社は13年、AK-47を長年製造してきた老舗メーカーのイジマシュ社と、12 年に破たんした兵器メーカー、イジェフスク機械工場を統合して設立された。株式の51%は政府系総合ハイテク企業ロステック(Rostec)が保有している。
同社は制裁導入前には銃規制の緩やかな米国市場での市場獲得を計画していた。SaigaやBaikalといった民生用のライフルやショットガンの売上は市場全体を上回る勢いで伸びており、2013年には米国市場が同社の銃器売上額のおよそ40%を占めるまでになっていた。しかし親会社のロステックが制裁措置の対象リストに入り米国市場での展開は困難となる。今年になり同社が事業多角化を意図して行ったモーターボートやドローンの製造メーカーの買収にはそうした背景がある。
多角化の一環として同社は衣料品の販売にも乗り出している。新しいロゴを取り入れるなどブランド戦略を展開、販売網も拡大する。ロシア各地に今年末までに60の小売店舗を開店させ衣料やライフルを販売する計画だ。同社でマーケティングを担当するドミトリエフ氏は、2020年までに売上に占める民生品の割合を50%まで高めたいと話す。最近のロシアでは愛国的なグッズや軍用ファッションの人気が高いことも期待を後押しする。
こうした努力を背景に同社の業績は回復基調にある。2013年は3億4,000万ルーブル(約470万ユーロ)の赤字だったが、今月発表される15年の決算では21億ルーブル(約2,900万ユーロ)の黒字となる見通しだ。
同社はまたロシア全土の銃砲店に担当者を派遣し、製品の販売促進を図るなど新たな努力も始めている。ロステックのブロフコ氏は「顧客をブランドで囲い込むのが主眼だ」と話した。(1RUB= 1.58JPY)