ロシア自動車市場、縮小続く

ロシアの自動車市場の縮小が続いている。同国の欧州ビジネス評議会(AEB)によると、今年上半期の乗用車及び小型商用車の新車販売台数は67万2,140台と前年同期比で14.1%減少した。ルーブル安と消費者の購買力低下を反映し乗用車の輸入台数も減少している。西側自動車メーカーの事業拡大は停滞しているが、一部のアジアメーカーには工場を新設する動きも見られる。

AEBによると、2016年の乗用車の新車販売台数は120万台と03年の水準も下回る10%減となる見通しだ。一方、プライスウォーターハウス・アンド・クーパースは20年までに210万台まで回復するとの見通しを示している他、AEBも17年以降はプラス成長に転じると予想している。

しかし現状では消費者の購買力の低下とルーブル安によって外国車ディーラーのビジネスは困難に直面している。輸入車市場も打撃を受けており、今年1-3月期の乗用車の輸入台数は12万2,700台と前年同期から31.7%減少した。トラックの輸入台数は13.5%減の8,300台だった。

これに対し政府は自動車産業に対する支援措置を講じてきた。今年は昨年の3倍に当たる1,380億ルーブル(約19億2,000万ユーロ)の補助金を交付する他、公用車の更新計画をさらに1年継続する。また、115万ルーブルまでの価格帯の乗用車の新車購入に対し、低利の自動車ローンやリース契約を消費者が利用できるような措置を導入している。しかし同国会計検査院長のタチャーナ・ゴリコバ氏は、政府の資金支援は成長にはつながっておらず、最悪の状態を免れるのにいくらか役立っている程度だと話す。

国内で生産するメーカーの苦境も続く。2015年の国内乗用車生産台数は22.7%減の120万台だった。産業貿易省は今年さらに5~7%減少すると予想している。売上の低迷を受け自動車メーカーは数十に上る車種の販売を中止した他、工場の稼働を削減するなどして対応している。フォード・ソレルスのボルガ工場は今年6月に2週間の稼働停止に追い込まれた他、稼働日を週4日に抑えている。ロシア最大の乗用車メーカー、アフトワズも今年2月から稼働日を同様に削減している。

一方で高級車の売れ行きは比較的堅調だ。独ダイムラーはモスクワ北方のイェシポボに年間2万5,000台から3万台の生産能力を持つ新工場を2億ユーロかけて建設し、メルセデスのオフロード車とEクラスを生産する計画を明らかにした。稼働開始は2019年上半期となる見通しで、1,500人を新規雇用する予定だ。

しかし国内メーカーの状況は厳しい。販売価格を抑えるためアフトワズとトラック大手カマスは金属部品メーカーとの協力を強化していく方針だ。経済紙『コンメルサント』によると、ソレルスとGAZグループも部品の調達を共同で行い購入価格を抑えるという。しかし実効性については疑問符が付く。圧延鋼板を納入するマグニトゴルスク金属コンビナート(MMK)の売上に占める割合はアフトワズ、GAZ、カマスと、4輪駆動車メーカーUAZの4社合わせても4%にすぎないためだ。

 アフトワズでは取引先への支払遅延も発生している。経済紙『ベドモスチ』によると2015年初頭の時点で部品の購入代金の支払いが100日から150日滞っていた。そのためこの7月にはフランスのルノーが同社に対し11.5%の金利で200億ルーブルを融資している。

一方アジアメーカーは同国での事業拡大に意欲的だ。中国メーカーの力帆集団(Lifan)と長城汽車が組立工場の建設を計画している他、福田汽車(Futon)もピックアップトラック「Tunland」とスポーツ多目的車(SUV)「Sauvana」の組み立てをロシアの自動車メーカーDerwayのチェルケス工場で行う計画を持っている。しかし他方では日本のトヨタがモスクワ南方のトリヤッティに3年前に開設したギアボックス生産工場では、需要低迷のため生産能力の7%しか稼働していないといった問題も生じている。

今年4月にはフランスの自動車部品メーカー、ユーロスタイル・システムズが3億ルーブルを投じてモスクワ近郊に工場を開設しプラスチック部品の生産を開始している。約80人の従業員でプラスチック部品とバンパーを製造し、ルノー、日産及びアフトワズに供給する。年末までに150人から200人まで増員すると共に、さらに3億ルーブルを投資する方針だ。(1RUB=1.57JPY)

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