任期満了に伴いルーマニアで11日行われた上下院選挙(定員:上院157、下院357)は、中道左派の野党・社会民主党(PSD)が両院で46%を得票して大勝し、政権に返り咲く見通しとなった。中道右派の与党・国民自由党(PNL)は約20%にとどまった。PSDは、昨年11月に総辞職したポンタ内閣(PSDを中心とする連立内閣)による経済政策が現在の力強い経済成長につながったと強調。国民の生活水準を底上げすると公約し、有権者の支持を得た。
PSDはリヴィウ・ドラグネア党首を首班とする連立政権樹立を目指し、両院で約6%を得票した自由民主連合との協議を開始する。ただ、ドラグネア党首は選挙法違反で有罪判決を受けた過去がある。首相候補の独占提案権を有するヨハニス大統領は以前から「司法関連で問題のある者は提案しない」と予告しており、具体的な政権の形はまだ不透明だ。
各政党の両院での得票率にはほとんど差がなかった。中央選管の速報によると、結党間もないルーマニア救国同盟(USR)は9%弱と予想を上回る健闘ぶり。少数民族政党のルーマニア民主ハンガリー連合(UDMR)約6%、バセスク前大統領率いる国民運動党(PMP)も議席獲得に必要な5%をクリアした。投票率は39.5%と2012年の前回選挙を2ポイント以上、下回った。
PSDの返り咲きで、汚職対策が後退する懸念が浮上している。ルーマニアでは2013年以来、毎年1,000人以上の政治家、高級公務員が汚職容疑で起訴され、ほぼ全員が有罪判決を受けており、欧州連合(EU)の欧州委員会の高い評価を得た。ただ、PSDが選挙戦で唱えてきた「国外からの内政干渉排除」は具体的にEUの影響力縮小を指しているとみられ、この関連で汚職が再び広まる可能性がある。