ポーランドが環境保護とエネルギー多様化に向けた代替燃料の導入を進めている。同国の石油・ガス大手は今年末を目途に、自動車用ガスの供給施設の拡充などを含む今後の戦略を提示することを予定している他、国内企業は関連機器の生産を行っている。また電気自動車(EV)についても充電設備の供給に力を入れる企業がある他、大都市はEVの導入を増やしている。
同国の大手石油企業PKNオルレンとロトス(Lotos)及びガス会社PGNiGはこの12月に来年の開発戦略を発表する予定だ。現行の投資計画を継続すると共に、エネルギー源の多様化や代替燃料の供給増を進める内容になると見られている。
ロトスの関係者は現地紙に対し、政府計画に従ったイノベーションと再工業化が中心的な課題だと話し、原料の入手と加工をより効率的に行うことを目指す必要があるという。目的はエネルギー安定供給と環境汚染物質の削減だ。
ロトスは給油所をエネルギーステーションに改編し、9月にエネルギー省が発表した輸送機関の環境負荷削減のための規制案に対応させることを計画している。同社の給油所では将来的に従来の燃料以外に圧縮天然ガス(CNG)や液化天然ガス(LNG)、また水素も扱う予定だ。それに加えEV用の充電施設も設ける。同社は昨年末の時点でポーランド国内に476の給油所を持っている。ポーランドでは液化燃料ではディーゼル燃料が依然大きな割合を占める。同社は4カ国にドイツで展開するスターブランドを含め2,710カ所の給油所を持つが、PKNオルレンは需要が増加すれば自動車用CNGの供給を拡大することを検討している。
PGNiGはポーランドの幹線道路沿いにCNG及びLNGの充填施設を建設する計画だ。同社は同国全体に20カ所の施設を持つ。昨年は収益性が低いことを理由として複数の施設を閉鎖した。同社の最も重要なCNGの顧客は大都市の交通機関だ。
同社は数年来同国におけるLNGの大手供給事業者となっている。中西部のオドラヌフと西部のゴロヅィスク・ヴィエルコポルスキにあるタンクローリーへのLNG充填施設に加えて、しばらく前にバルト海沿岸のシフィノウイシチェ港のLNGターミナルが完成した。同社はLNG船への燃料供給施設の建設を計画しているが、国内のみならずバルト海沿岸の他国の港にも設置することを目指している。
ポーランドの液化ガス事業者でつくるポーランド液化ガス協会(Polska Organizacja Gazu Plynnego)によれば、過去3年間で自動車用ガスの売上は増加したが、供給施設の数は減少した。一方2015年には10万台から12万台の自動車に液化石油ガス(LPG)タンクが取り付けられたと試算している。それにより同国のLPG自動車は約7万台増の291万台となった(引退した車両を除く)。ポーランドは欧州ではイタリア、ドイツを上回る自動車用ガスの消費国であり世界的に見ても韓国、ロシア、トルコ及びタイに次ぐ。
ガス燃料供給装置の生産も進む。北東部のビャウィストクには5つの企業がある。その中で最大の上場企業ACは400人を雇用し40カ国に輸出している。同社の年間売上高は約1億7,000万ズロチ(約3,800万ユーロ)、収益は2,000万ズロチに上る。同社はSTAGのブランド名で年間数十万に上るLPG及びCNG供給装置を生産している。装置を設置する公認の修理工場はポーランドだけで100以上に上る。昨年同国を走る自動車に組み込まれたLPG装置の半分余りがAC社のものだった。
また従業員数76人のEuropeGASも世界中に製品を輸出している。同社の売上の80%は輸出によるもので、ギリシア、タイ、米国、カンボジア、ロシア、ウクライナ及びキプロスに支社を持つ。
東部のクレオシンにあるアレックス(Alex)も100人の従業員で自動車用ガス機器を生産する。LPGTechはそうした機器に使用する部品を生産している。最近立ち上げられたDGI社はビャウィストクの科学技術団地に拠点を持つ。
ポーランド企業はEV開発にも取り組んでいる。西部のジエロナ・ゴラのエコエネルゲチカ・ポルスカ(Ekoenergetyka Polska)は今年9月、同国の開発省とEVのための研究開発センターを設立することで合意した。従業員36人の同社は電動バスの充電装置の欧州最大手。ポーランドでは18の都市が2025年までに公共交通機関の40%を電動バスにすることを予定していることから、同社は将来見通しは明るいと見ている。既に数十の装置をドイツ西部オーバーハウゼンの路面電車用に納入している。(1PLN=27.42JPY)