ドイツ東部ザクセン州の中堅企業が相次いでチェコでの事業拡充に乗り出している。特に同州に隣接するチェコのウースチー州には自動車関連メーカーなどが進出、工場の拡張や従業員数の増加を図っている。その背景には同国の人件費がドイツに比べ安価であることや、多くの自動車メーカーが進出しており地理的にアクセスしやすいことなどがある。ドイツからの雇用の流出を懸念する声がある一方で、ドイツとチェコの両拠点を活用し業績を拡大している企業もあり、さらにアジアなど海外への進出を模索する動きも見られる。
ドイツ・チェコ商工会議所よると、チェコに子会社を開設する同州の企業は増加傾向にある。特に手作業を要する工程をチェコに移す企業が多い。その最大の理由は人件費。欧州連合(EU)加盟後10年を経てもなおドイツとの人件費の開きは大きく、チェコの月平均給与は1,000ユーロにすぎない。その額はザクセン州が隣接するボヘミア北部ではさらに下がる。
そのボヘミア北部に進出する企業の1つにザクセン州ヨーシュタットに拠点を置く自動車内装材メーカー、ケストラーがある。ボスニアのホムトフに工場を持つ同社は今後現地での従業員数を倍増する計画だ。売り上げの65%を占めるエアバッグのヒンジ部品の他、内装用プラスチック及び生地を生産する同社はチェコの他、さらに東欧やアジアでの工場建設も検討している。
同じくザクセン州ドレスデンの電動モーターメーカーVEMは、ボヘミア北部のコモラニに持つ工場を拡大する。現地子会社のVEMチェコは電動モーター用コイルを生産し、ドレスデン及び同じくザクセン州のツヴィカウの工場に供給している。同地に進出したのは10年前。今では同社のコイルの90%がチェコ産だ。140人を雇用するコモラニ工場の他、スロバキアなどに計6つの工場を持つ。
ザクセン州の自動車部品メーカー、セレクトロナは、ボヘミア北部のコスタニ工場の生産能力の拡大を図る。自動車メーカー向けの金属及びプラスチック混合部品を製造する同社は、2013年以来同地で80人の体制で生産してきた。同社は2020年までに売上高を倍増させると共に従業員数を増やす予定だ。コスタニ工場の他、チェコ国内ではスウェーデンからギリシアに至る欧州自動車道路に近いドゥビーに配送センターを置いている。