ウクライナ金融業界の状況は破綻寸前まで悪化している。中央銀行の統計によると昨年の業界赤字総額は1,590億フリブナ(54億5,000万ユーロ)に上った。不良債権比率は30.5%としているが、他の機関は50%以上と推定する。業界関係者は取り付け騒ぎに発展する事態も覚悟している。
問題の中心にあるのは国内最大手のプリバートバンクだ。人口の半分弱に当たる2,000万人の口座を管理する。中銀の審査の結果、莫大な不良債権を抱えていることが判明し、政府は銀行危機を回避するため、昨年12月に国有化に踏み切った。これにより、取引客はひとまず安心したが、本来の原因は解決されておらず、緊張が続いている。
プリバートバンクは設立者である富豪イホル・コロモイスキ氏への遠慮から、財務問題の表面化が遅れた。同行の法人融資はほぼ全額が株主と関係のある企業向けで、現実的には回収が不可能だ。また、中銀上層部の複数の証言によれば、米会計大手のプライスウォーターハウスクーパース(PwC)が担保物権を不当に高く評価したことも不良債権の拡大につながった。
このような状況下でも中銀は同行の不良債権比率を11.4%としており、その正確性が疑われている。
同国では国有銀行の不良債権比率は45%、外資系銀行は36.4%とされる。民間銀行は低く見積もっているが、これを正すため、中銀は最近、新規則を発し、より厳しい算定法を義務付けた。今後、現状が明らかになっていくとみられる。
ウクライナでは富豪(オリガルヒ)が実権を振るう構造が根強く、汚職体質がしみこんでいる。訴訟を長引かせるほうが金利を払うよりも安いこともあり、一般的に「借金を返す者は肝が小さい」と言われるほど、返済モラルが低い。
多大な損失を出しているロシア系銀行を中心に、撤退に向けて売却を望んでいるところも多いが買い手が見つからないのが現状だ。(1UAH=4.12JPY)