チェコ自動車産業会が成長戦略の指針策定へ、EV・自動運転を念頭に

チェコ北中部のムラダー・ボレスラフで先ごろ、政府と同国の自動車工業会AutoSAPの主催により、同国の自動車産業に関する会合「コレギウム:チェコ自動車産業の将来」が開催された。自動車最大手のシュコダが本拠を置く同市で開催された同会合は、国の主要な輸出産業に成長し経済の牽引車となっている自動車産業の将来について議論することを目的としたもので、政府関係者や自動車産業関係者の他、大学など研究開発機関の代表者が出席した。会合では、近年のデジタル化など大きな変化にさらされている同産業をいかに発展させていくかについて議論され、今年半ばまでに「チェコ自動車産業の未来のための協定」を作成し採択することが決定された。

チェコの輸出に占める自動車産業の割合は約25%。15万人を雇用する同国の一大産業だ。しかし近年デジタル化や電気自動車(EV)に関連した技術革新が進展する一方、環境配慮を求める消費者の声が高まるなど同産業にも変化が求められている。そうした最近の動きを背景に策定される同協定は、国内自動車産業の今後の発展のための具体的な筋道を提案するものとなる予定だ。同会合で講演を行ったシュコダのマイヤー会長は、国内の自動車産業は既に堅固な基盤を持ち立地拠点としての地の利も確立しているとした上で、「重要なのは現在持つ強みを守っていくと共に新しいものを作り上げ発展させることだ」と述べ、自動車産業の将来を見据えた対策を産官学が一体となり策定していくことの意義を訴えた。

同会合で共有された認識の1つは、将来は従来の生産技術以外にサービスとデジタル技術の重要性が一層高まり自動車産業も変容を迫られるというものだ。会合ではそれに応じた教育や研究開発への投資促進が必要であるという点で意見の一致が見られた。現状ではチェコでは国内総生産(GDP)の成長率が研究開発投資の伸び率を上回っている他、研究開発費のGDPに占める割合は1.9%で経済協力開発機構(OECD)平均の2.4%を下回っている。

デジタル化と新技術によって可能となったEVと自動運転の分野は大きなポテンシャルを持つ。こうした新分野に対応するため、シュコダの関係者は政府に対しスマートシティ、ブロードバンドの全土への普及といった政策の推進を求めた。自動運転については国家戦略に基づく支援が必要だとし、研究開発の助成や走行試験を行うテストコース(「テストコリドー」)の設置が提案された。提案されたテストコリドーは、シュコダが拠点を置くムラダー・ボレスラフからプラハ、ピルゼンを通り、ドイツのニュルンベルグに達する長距離ルートとなっている。同社はまたクリーンなモビリティのための国家計画の策定や、政府レベルの専門家委員会の設置の他、消費者に対するEV関連の助成措置の必要性を訴えた。

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