ハノーバーメッセのパートナー国ポーランド、I4.0で産業振興

4月に開幕するドイツ最大のハイテク見本市ハノーバーメッセでは、今年のパートナー国として参加するポーランドに注目が集まる見通しだ。同国ではインダストリー4.0(I4.0)を推進する産官学の協力団体「ポーランド・I4.0イニシアチブ」が既に発足し国を挙げてデジタル化に対応しようとしている他、政府が昨年発表した経済発展計画では、競争力強化と所得増加に向けて企業のイノベーションに対する支援や研究開発支出の増加を進める意向を明らかにしている。現状では同国でのロボットの利用率は低く自動化など十分進んでいるとは言えないものの、今後は産業機械の更新が進みソフトウエアが導入され、I4.0やモノのインターネット(IoT)に対する需要が急増すると予想されている。

同国における生産プロセスの自動化は他国に比べるとまだ不十分だ。2014年時点の同国の労働者1万人当たりの産業用ロボットの台数は22台。トップの韓国の478台、日本の314台、ドイツの292台と比べると大きな隔たりがある。同じ中欧諸国でもスロバキアが88台、チェコが82台、ハンガリーが49台で、いずれもポーランドを上回る。もっともその数は増加傾向にあり、同国の市場経済研究所が行った調査によると08年に4,217台だった産業用ロボットの数は14年には8,513台と倍増した。

同国の中央統計局(GUS)の調査では、2014年末時点のオートメーション関連機器の数は約11万1,000台。そのうち利用数が多いのは1万5,300台の自動車産業で、それにゴム・プラスチック製造、金属加工が続く。独電機大手のシーメンスが行ったポーランドの大企業に対する調査によると、生産ラインのオートメーション化を一部でも実施していると答えた企業の割合は全体の57%近くに上る。また40%がビッグデータや機器間通信(M2M)及びIoTを利用していると答えている。

同国のI4.0やIoT関連製品に対する需要は今後増加する見通しだ。市場調査会社IDCが行った調査によると、2015年に5億ユーロだった同国におけるIoT関連製品の売上高は19年までに倍増すると予想されている。また同国では企業が今後産業機械の更新を進め輸入需要が増加するとみられている。

I4.0の推進に不可欠なソフトウエアとその関連サービスについても今後の伸びが期待される。IDCによると2015年の同国クラウドサービスの売り上げは約1億4,600万ユーロ。ユーロスタットによると現状ではクラウドサービスを利用するポーランド企業の割合は全体の6%で、欧州連合(EU)平均の3分の2に過ぎない。しかし米マイクロソフトのポーランド法人によると、クラウドサービスの利用は年率30%の勢いで伸びているという。

自動化とデジタル化の推進に当たっての大きな障害は価格だ。同国における月間平均給与は1,000ユーロを下回っており、隣国ドイツの25%に過ぎない。そのことが高額な機器の導入を妨げる一因となっている。また費用以外の課題を挙げる企業も少なくない。ボストンコンサルティンググループが同国の製造業に対し行った調査では、約60%の企業がI4.0導入の障害として、投資資金の不足、労働者の質の不足及びデータ保護に関する不安を挙げた。

そうした中、産官学の協力団体「ポーランド・I4.0イニシアチブ」がI4.0に向けた取り組みを開始している。デジタル化、リファレンスアーキテクチャ及び標準化、ビッグデータ、教育・職業訓練、法的側面に関する各部会を発足させ、政府機関、企業、研究機関がI4.0に関する情報や経験の共有を図り課題の検討を進めている。また「I4.0専門センター」を設置しシミュレーション及び実証試験施設を設ける他、地方にも専門センターを設けて研修の場を提供するなど実証試験での協力を促していく予定だ。

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