経営難に陥っている南東欧食品最大手のクロアチア・アグロコル(Agrokor)に対し、ロシア銀行最大手で国営のズベルバンクが3億ユーロを追加融資する。これにより、アグロコルはグループ再建のチャンスを得る。ただ、現地報道によるとズベルバンクは新規融資に当たって経営に一定の影響力を得ることを条件としたもようで、背景にロシア・クロアチア政府間のきしみがあるとみられている。
アグロコルは実業家イヴィツァ・トドリッチ氏が花屋を基に築き上げた食品・流通系複合企業だ。しかし、2014年のスロベニア流通最大手メルカトル買収時にズベルバンクおよび同じロシアのVTB銀行から借り入れた融資など、昨年末現在の有利子債務は34億ユーロ、買掛金などを含む得た債務総額は推定60億ユーロにも上る。
さらに、1月にはズベルバンクやBNPパリバなど5銀行による協調融資契約を解除したことで資金繰り不安が発生。米格付け大手のムーディーズとスタンダード&プアーズ(S&P)は同社及びオーナー一族の信用力を格下げし、見通しも「弱含み」と厳しい見方を表明した。その上、ズベルバンクが先月、継続融資の打ち切り(=債務返済)を要求したことから、来年6月に償還が迫る5億ユーロの債務には債務整理と企業の再編が必須とみられている。
アグロコルは傘下に60社を要し、従業員数は国外の2万人を含めて6万人に上る。年商規模はクロアチア国内総生産(GDP)の16%弱に匹敵し、同国経済を支える大きな柱だ。
クロアチアのブレンコヴィッチ首相はロシアと一定の距離を置いており、昨年11月のウクライナ訪問時には、内戦の舞台となっている同国東部の再編入に、ユーゴ内戦後にクロアチアが採用したモデルを提案した。このような行動がロシア政府の逆りんに触れ、アグロコルに対するロシア国営銀行からの資金供給を見直す動きに出たと推測されている。ズベルバンクとVTB銀行の対アグロコル債権残高は13億ユーロに上る。
なお、経営立て直しに傘下企業が売却されるとの見通しに関しては、20日、ロシアの流通大手マグニットがアグリコルの流通子会社3社を買収する可能性が報じられている。