ロシア産天然ガスを黒海・ブルガリア経由で欧州に供給するパイプライン計画「サウス・ストリーム」が再び動き出す様相を見せている。13日付のオーストリア日刊紙『ディー・プレッセ』などが報じたところによると、ロシアで開かれたサンクトペテルブルク国際経済フォーラムに参加したオーストリアのケルン首相はロシアのプーチン大統領との会談で、ロシアとドイツを北海経由で結ぶパイプライン「ノルド・ストリーム2」に加え、ロシアから黒海を経由して南欧まで天然ガスを運ぶパイプライン計画について議論した。2014年に計画中止に追い込まれたサウス・ストリームには、天然ガスをブルガリアからオーストリアまで運び各国に供給するルート案が含まれており、通行料収入などの観点からオーストリアにとり魅力的な計画となっていた。
サウス・ストリームはロシア南部のアナパからブルガリアのヴァルナに向けて海底パイプラインを敷設し、年間630億立法メートルの天然ガスを欧州に供給するというもの。同計画の発端は、ロシアとウクライナ間の係争により欧州へのガス供給が制限されることを懸念する声を背景にしたものだったが、天然ガスの生産と輸送の事業分離を求める欧州連合(EU)の欧州委員会が垂直統合型の事業形態を取る露ガスプロムに対し懸念を示したことから中止に追い込まれていた。
プーチン大統領とケルン首相の今回の会談における議論の詳細については明らかにされていない。一方でハンガリーのシーヤールト外務貿易相が、欧州委員会に対しハンガリーとセルビアが同計画に関する働きかけを行う可能性があることを示唆するなど、南欧ルートの計画実施に向けた動きも見られるようになっている。
ロシア産天然ガスの黒海輸送ルートを巡っては、トルコを経由するいま一つのパイプライン計画「トルコ・ストリーム」がある。同計画は2015年のトルコ機によるロシア軍機撃墜を受け停滞していたが、昨年10月のプーチン大統領とトルコのエルドアン大統領の合意を受け、今年に入りロシアのアナパルからトルコの欧州側にあるキイクルまでの敷設工事が開始されている。2019年の完成後はトルコ側のハブ施設があるルレブルガスまで年間160億平方メートルを輸送する予定で、敷設される2本のパイプラインのうち1本は南欧向けとされている。墺日刊紙『デア・スタンダード』によると、墺石油大手OMVはルレブルガスから同国までのパイプラインを強化し、イタリアなどに供給することを念頭に置いている模様だ。ただオーストリアのハブ施設バウムガルテンに向けてはブルガリア、セルビア及びハンガリーにおける輸送能力を拡張する必要がある。
同紙によると、ガスプロムはOMVに対し天然ガスを供給する意向を示している。