ロシア中央銀行は先ごろ、経営危機に陥っているユグラ銀行(Jugra Bank)を管理下に置き、ロシア預金保険公社に引き継いだことを明らかにした。中銀は同時に債権者に対し3カ月間の支払猶予を宣言した。今後半年をかけて同行の資産などを精査し、事後を決定する予定だ。ユグラ銀行は総資産額で同国30位、預金量で20位の準大手行で、ロシアにおける過去最大規模の銀行破綻となる可能性がある。
ユグラ銀の資産規模は1,816億ルーブル(約26億6,500万ユーロ)で、預金保険公社によって保護されるのは1,692億ルーブル(24億8,300万ユーロ)。破綻した場合には同公社にとり過去最大の保険金支払額となる。同公社はユグラ銀の業務を監督し財務を精査するための一時的な管理組織を置く予定。
ユグラ銀のワシーリー・ポスディシェフ副総裁によると、昨年4月に中銀はユグラの個人向け事業を制限したが同行は引き続き業務を継続し、預金者に株式を渡すことで規制を免れていた。その結果18億8,000万ルーブル(2,800万ユーロ)の損失が発生したという。
1990年設立のユグラは2012年には総資産額で同国272位だったが、15年には35位と急上昇した。その間、オーナーの透明性も改善されてきた。同行の過半数株を所有するモスクワの不動産開発事業者アレクセイ・チョチン氏は、中銀と預金保険公社に協力する意向を表明している。
ユグラ銀のアレクセイ・ネフェロフ頭取は、同行は中銀の規則をすべて遵守すると共に十分な流動性を保持しており、状況は未だ確実ではないと述べた。しかし金融監督当局は、同行は自己資本を他行からの借入で賄っていた疑いがあるとみている。また貸出の半分は同行と関係の深い企業に貸し出されている。
同行の預金者に対しては2週間前から既に預金の支払いが開始されている。預金者は1人当たり140万ルーブル(2万500ユーロ)の支払いを求めている。過去3年半の間に11億ルーブルを他行の破綻に際し支払ってきた預金保険公社は中銀の支援に頼らざるを得なくなっており、過去最大となる今回の支払いは非常に大きな負担だ。これまで最も大きかった保険金支払いはマスター銀行破綻時の350億ルーブル(約5億1,400万ユーロ)だった。中銀は今回紙幣を増刷する必要があるとの見方もある。
中銀のナビウリナ総裁は就任以来、疑義のある取引を行う銀行に対し厳しい姿勢を示してきた。これまでに処理した340の銀行のうち、大半は小規模な銀行だった。(1RUB=1.90JPY)