寿命と生きがい~ロシア

ロシア人の寿命が伸びている。連邦統計局(ロススタット)によると、2016年の平均寿命は過去最高を記録した。しかし、男性の寿命は66.5歳と、女性の77.1歳に比べて10年以上短い。理由の一つは飲酒にある。

体制転換による混乱が一段落した2000年以来、政府は保健政策の一環として広告の禁止や販売時間の規制など、喫煙・飲酒対策を進めてきた。それもあってか、寿命は2000年からの16年間に、男性で7.5年、女性で4.9年伸びた。

ただ、世界の国々の平均寿命や死因の統計を集計している「ワールド・ライフ・エクスペクタンシー」によると、死因の中で「飲酒」が16番目に多い。飲酒による死亡がこれよりも頻繁な国は3つしかない。

加えて、飲酒に伴う事故もある。今月、チェリャビンスクの川でボートが転覆して子ども4人を含む7人が犠牲となった事故では、助けようとして亡くなった大人2人は酒を飲んでいたという。飲酒は判断能力を鈍らせる。酒が表面に出てこない死亡事故がどれだけあるか、確定は難しい。

対策としては、◇密造品や代替品による中毒死を防ぐためにウォッカ価格を下げる◇ワインを飲むよう宣伝する――など、様々な案が出ている。しかし、これらが本当の対策ではないという指摘もある。

高等経済学院人口学研究所のオルガ・イスポヴァ上級講師は、「何が起こるかわからないロシアでは、将来の計画を立てる習慣がない。先のことを考えるよりも『今』を楽しもうという人が多い」とみる。「自殺」が死因の9位に入っていることをみても、生きがいを見つけ、長生きしたいと思うような環境を作っていくことが大事なのかもしれない。

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