低コストの労働力が魅力=ブルガリア

ブルガリアでは近年、順調な経済成長によって雇用が創出され失業率も低下している。昨年の実質国内総生産(GDP)成長率は3.4%で、今年も同様の成長が続く見通しだ。また他の欧州諸国に比べて低い賃金水準に加え、高い外国語能力によって外国企業にとり魅力的な立地先ともなっている。しかし一方では、労働人口の流出や技能労働者の不足など労働市場や教育政策に関連する課題が指摘されている。

同国では労働者の国外への流出や就業可能人口の減少といった人口動態に関連した問題が存在しており、潜在成長率の低下につながる可能性があることから政府も取り組みを進めている。これらは失業率の低下につながるものの、一方で専門技能を持つ人材の不足が成長の足かせになりかねない。そのため労働省は欧州外の第三国の労働者を雇用することができる職業10種類を指定するなどの対応策を打ち出してきた。

 欧州連合(EU)も同国の取り組みを支援する。2016年10-12月期(第4四半期)の20歳から65歳までの人口に占める就業者の割合は67.7%で、EUの「欧州2020」戦略の目標値である75%を下回っている。同国は欧州構造基金の運用プログラム(OP)のうち「人材開発」の対象となっており、14年から20年にかけて就業人口の増加と職場の質の改善のため5億5,900万ユーロの助成を受けている。うち1億1,000万ユーロは若者向けの雇用創出を対象とするものだ。

民間での取り組みも進む。同国に進出する外国企業は技能労働者の不足を補おうとしており、例えばドイツ企業は企業内での職業訓練により専門技能を養う方針を取っている。ドイツ‐ブルガリア商工会議所は、ドイツで普及している学校教育と企業内訓練を組み合わせたデュアルシステムの一部を取り入れようとしているほか、同会議所の関係企業は「Erasmus+」と呼ばれるEUのプロジェクトを通じ、特に中小企業における職業訓練に関するアドバイザーの育成に取り組んでいる。

■高い外国語力、低い賃金水準

一方、同国の労働者の外国語能力は比較的高い。欧州連合統計局(ユーロスタット)によると、外国語を1つ学習している児童・生徒の割合は全体の83.3%で、16.5%は2カ国語又はそれ以上の言語を学んでいる。最も割合が高いのが英語で、次いで多いのがロシア語だ。一般に技能労働者は欧州の外国語を最低1つ話すことができる。給与水準が低い上、外国語の理解度が高いことから同国はアウトソーシング先としての魅力を放っている。

賃金水準が依然として低い点も外国企業にとり大きなメリットだ。欧州統計局(ユーロスタット)によると、ブルガリアの1時間当たりの給与水準は社会保障を含めても4ユーロ40セントで、欧州でも最低水準にある。また、同国統計局によると昨年12月の平均給与は1,012レフ(515ユーロ)だが、その水準は上昇傾向にある。ただし、統計局の出す給与水準には注意が必要だ。民間部門では、統計上捕捉されているのは給与の一部のみである可能性がある。現金支払いが日常的に行われており、申告された給与と実際の支払額が大きくかい離していることも考えられる。このため外国企業にとっては、統計局の数字よりも人材紹介会社の給与データの信頼性が高いが、こちらは外国企業の数字を反映しやや高く出すぎる嫌いがある。

■人材獲得は紹介・コネで

ブルガリアでは、紹介又はコネ、公的な職業紹介所、インターネットサイトを介して人材を探すのが一般的だ。労働者や単純事務職を募集するには、日刊紙『24チャッサ』(www.24chasa.bg)や『トルード』(www.turd.bg)が適している。管理職については経済紙『ドネブニク』(www.dnevnik.bg)や『キャピタル』(www.capital.bg)がある。これらの媒体の求人広告は人材コンサルティング会社が間に入るため、募集企業の名前が伏せられているのも利点だ。

社会保障については2003年、社会保険料の負担に関連して労働条件に応じた職種の区分が導入された。レベルI(過酷な労働条件)、レベルII(困難な労働条件)、レベルIII(通常及び軽度の労働条件)の3つの種別で、社会保険料の企業負担に差がつけられている。レベルI及びレベルIIの労働者に対しては企業が職業別年金基金の保険料を負担するとされている。社会保険料の企業負担分の最高額は現在2,600レフ(1,323ユーロ)。経済省の16年から18年にかけての家計予測によると、この上限額は来年も変化しない見通しだ。社会保険料の企業負担分の最低額は産業部門や職種毎に異なっている。(1BGN=66.28JPY)

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