トルコ企業が生産性の向上と国際競争力強化に向けて産業のデジタル化への取り組みを進めている。インダストリー4.0(I4.0)をはじめとするデジタルの新潮流は同国の政府や企業で注目を集めており、モノのインターネット(IoT)、人工知能、ビッグデータ、クラウドコンピューティング、サイバーセキュリティといった関連テーマが取り上げられる機会は増えている。同国企業のデジタル化の度合いは低く、それに向けた取り組みは緒に就いたばかりだが、I4.0に関するポータルサイトの開設や研修プログラムの設置など、現地に進出する外国企業を中心にその導入に向けた動きは活発化しつつある。
政府は2023年までに世界10位の経済大国になるという野心的な目標を掲げている。アナリストの多くは、1人当たりの国内総生産(GDP)が1万ドルを突破して「中進国の罠」から脱却する鍵となるのは、生産と製品のデジタル化だとの見方を示している。しかし国内産業の多くでは、それに向けた動きは十分ではなく、現状ではデジタル化の進捗度は自動車産業や電子産業でも十分な水準に達していない。このことはハイテク製品の生産比率やその輸出比率が低いことにも現れている。総輸出額に占めるハイテク製品の割合は3.5%、売上総額で同国上位500位までの企業のうちハイテク技術を用いているのは3.2%に過ぎない。トルコ科学技術研究機構(TUBITAK)は、依然として(20世紀初頭の電気技術による産業革命を指す)「インダストリー2.0」の手法で生産が行われている部門が多いとし、まずコンピューターを利用した自動化から始める必要があると結論付けている。
■ドイツ企業がけん引
一方現地に進出するドイツ企業は現地のパートナーと連携してI4.0の導入を進めている。電機大手シーメンスはI4.0に関するポータルサイトを開設し、現地企業を巻き込んでいく方針だ。同サイトの参加企業・団体には、家電のアーチェリック(Arcelik)、板金機械のドゥルマ(Durmazlar)、ソフトウェアのボガジチ・ヤジリム(Bogazici Yazilim)、自動車用ホイールのCMS Jant ve Makina、バッテリーのインチ(Inci)、トルコ技術開発基金(TTGV)などがある。
工場自動化などの分野で実績のあるドイツのフェスト(Festo)はトルコの大学や研究機関と教育・訓練の分野で密接に協力している。I4.0に対応した十分な技能を持つ人材が不足しているため、同社は空圧、電子、機械、プロセス自動化といった分野のデジタル化に関するセミナーを56種類開催している。
自動車・機械部品大手ボッシュの現地子会社は、ボスポラス大学と協力して「変化を起こす:デジタル生産とI4.0」と題する教育プログラムを開始している。同プログラムには全学生が無料で参加することが可能だ。
■様々な業種に広がるデジタル化
このほか衣料、菓子メーカーや物流関連企業も取り組みを始めている。西部イズミルの自由経済特区に進出している独衣料品大手ヒューゴ・ボスは、2020年までに工場のデジタル化を進める意向を明らかにしている。16年に「テクノラブ」(TechnoLab)を開設した同社はオートメーション化とロボティクスに集中する方針で、来年には人工知能を導入する予定だ。
トルコのチョコレートメーカー、ショレン(Sölen)は南東部のガジアンテプ県に6億リラ(約1億4,300万ユーロ)を投じて機器間通信(M2M)のシステムを導入した新工場を建設した。12万平方メートルの広さを持つ同工場は62の生産ラインを持ち、日産80万トンを生産することができる。(1TRY=31.36JPY)