中東欧、医療ツーリズムで人気

中東欧で医療ツーリズムの人気が高まっている。西欧諸国やロシアなどから患者を集めており、近年同部門の成長率は10%を超えている。現在は初歩的な医療サービスの提供に留まるものの、高度医療までサービスを拡大する余地があるため、同地域の医療ツーリズム産業は今後さらに成長する可能性がある。しかし一方では政府支援策の不足など課題も指摘されている。

プライスウォーターハウスクーパース(PwC)が今年発表した報告書によると、中東欧地域の医療ツーリズム産業の成長率は年率12~15%。ポーランド医療ツーリズム協会によると、昨年ポーランドを訪れた外国人患者の数は総計で48万8,000人に達している。各国それぞれが外国人向けの得意分野を持っており、ポーランドは美容整形と歯科医療、ハンガリーは歯科医療、チェコは白内障手術で知られている。

中東欧にやってくる外国人患者の出身地は様々で、西はイギリスから東はロシアまでの広い地域から患者を集めている。ドイツ、英国及び北欧諸国からの患者は居住国に比べ半額もしくは3分の1程度ですむ安価な料金に惹かれて同地域にやってくる。

こうした傾向は2013年に施行された欧州連合(EU)指令によって加速した。同指令で患者はいずれの加盟国においても治療を受けられるようになり、国の健康保険でカバーできる場合には支払いを求めることが可能になった。

西欧以外では旧ソ連地域からの患者が増加している。専門的で高度な設備を利用した医療サービスを受けることが難しいためだ。これらの患者は西欧諸国からの患者に比べより複雑な医療を求める傾向があるという。

中東欧地域の医療ツーリズムの今後の発展については課題を指摘する声もある。ポーランド医療ツーリズム協会のゴスク氏は、医師の技量も高く医療の質は西欧諸国と変わらないとしつつも、政府の後押しがあれば民間の医療ツーリズム産業はさらに拡大する可能性があると話す。同氏は、政府は医療ツーリズム促進プログラムを策定したものの、産業見本市などでアピールしようとしているのみで有効な対策をとっていないと指摘。ターゲットとサービスの明確化、戦略的なマーケティングと促進策を行うべきとの考えを示している。また、PwCのピアトコフスキ氏は、ポーランドの医療機関は投資をさらに行い事業の重点を見直すべきだと指摘する。

一方、初歩的な医療で人気を集めるトルコの促進策に注目する声もある。同国政府はフラッグキャリアのターキッシュエアを利用する外国人患者の治療費を割り引いたり、外国人向けに非課税の医療特区を設けるなどの措置を導入している。

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