欧州委員会は6日、西バルカン地域6カ国の欧州連合(EU)加盟に向けた新戦略を発表した。加盟交渉で先行するセルビアとモンテネグロに関しては、2025年の加盟を目標とする方針を打ち出した。地政学的に重要な位置にあるバルカン半島では近年、ロシアや中国が存在感を強めている。英国のEU離脱で加盟国の結束が揺らぐなか、バルカン諸国の早期加盟に向けて支援を強化し、同地域の安定を図る。
新戦略の対象は、すでに「加盟候補国」となっているセルビア、モンテネグロ、アルバニア、マケドニアと、「潜在的な候補国」のボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボの6カ国。EUは加盟を後押しするため、新たに18年予算から10億7,000万ユーロを拠出して法整備や企業の育成などを支援する。
欧州委はこれらの国に対し、法の支配の徹底、人権の尊重、汚職の排除、旧ユーゴ紛争で悪化した国や民族間の関係改善などを要求。セルビアに関しては、自国から独立したコソボの承認が加盟の条件になると指摘した。コソボを巡っては、EU内でも自国に分離独立運動を抱えるスペインやギリシャなど5カ国が承認を見送っている。
欧州委のユンケル委員長は声明で「西バルカン地域の安定と繁栄を後押しすることが、EUの安全保障と将来への投資を意味する」と強調。モゲリーニEU外交安全保障上級代表は「西バルカン地域は欧州の一部だ。6カ国のEU加盟に向けて明確な道が存在する。EUの将来は27カ国(英国を除いた加盟国数)に縛られるわけではない」と述べた。