チェコ政府、豪企業とのリチウム採掘覚書の無効を宣言

チェコ政府は1日、豪ヨーロピアン・メタルズ(EMH)と結んだリチウム開発に関する覚書の無効を宣言した。昨秋の議会選挙で勝利したバビシュ首相率いるANOの公約「国内企業によるリチウム生産」を実現する狙い。EMHはこれに対し、開発継続の意思を明らかにした。

リチウムは大容量バッテリーの主要材料で、電気自動車(EV)やスマートフォンなどの製造業で需要が急増している。チェコには欧州のリチウム埋蔵量の約3%が存在すると推定され、2010年、国内企業のゲオメットが環境省から免許を取得して地質調査を開始した。このゲオメットを2013年にEMHが買収し、昨年10月初め、開発後の採掘権取得に道を開く覚書を政府と交わした。

しかし、リチウムが戦略的資源と位置付けられていることや、EMHが英バージン諸島の持ち株会社の傘下にあり、株主構成が不透明であることなどから、EMHとの覚書が「国益を損なう」との見方が浮上。ANOや共産党は選挙戦の主要論点の一つとして「採掘事業の国営」を訴えた。

なお、EMHは採掘権を保証しているのが覚書ではなく、ゲオメットの持つ探査免許であるとし、開発作業を続けていく姿勢を明らかにしている。この秋に完了する事業化調査の結果が良好であれば、ドイツ国境に接するチェコ北西部のドゥビー市チノーヴェツ地区で鉱山を開く意向だ。早ければ2022年に採掘を開始する。

上部へスクロール