中央アジア諸国、ロシアとの距離を模索

ウズベキスタンで2016年にミルジヨフ大統領が就任して以来、中央アジア5カ国の間には新たな協力関係が生まれている。同大統領はカリモフ前大統領の孤立主義を大きく転換させ周辺諸国との協力強化に動き、伝統的にこの地域への強い影響力を持つロシアや、一帯一路を掲げ大陸諸国への浸透を図る中国など、これまでこの地域に大きく関与してきた大国との関係にも変化の兆しが出てきている。

カザフスタンの首都アスタナで3月15日、中央アジア5カ国の首脳が会するサミットが開催され成功裏に閉幕した。会合には、大統領自身の出席を見合わせたタジキスタンを含む5カ国の首脳が出席した。伝統的に同地域での紛争の種となってきた水利権の問題が議論されたほか、天然資源を含む同諸国間での貿易の活性化などの課題が取り上げられた。会合をホストしたカザフスタンのナザルバエフ大統領は「中央アジア諸国の問題を解決するのに外部の力を借りる必要はない。我々は自らの力で地域の抱えるすべての問題を解決することができる」と述べた。

こうした変化の背景には、同地域で最大の人口を抱えるウズベキスタンが、2016年に就任したミルジヨエフ大統領の下でカリモフ前大統領の方針を大きく転換したことがある。カリモフ前大統領は国境問題や水資源管理等に関し周辺諸国との協調よりも対立を選び、同地域の問題にロシアをはじめとする大国の介入を招いてきた。

米国のジェームズタウン財団の研究員、ポール・ゴーブル氏は、現在中央アジアで生じていることを理解するには、ウズベキスタンのミルジヨエフ大統領のとる新しいアプローチに加え、カザフスタンが初めて、同地域とロシアの間に立つ仲介者としてではなく中央アジアの国として振舞い始めたことに注目する必要があると指摘する。

同氏によると、ソ連時代にロシアはこの地域を「中央アジア及びカザフスタン」と呼んできた。この呼称には一種の分割統治ともいえるロシアの同地域に対する長期的な政策が反映されているという。すなわちカザフスタンがロシア人の居住する同国北部を失うというリスクを冒さなければ中央アジアの国であることができないようにする一方で、同国には中央アジアの一部としてウズベキスタンへの対抗勢力としての役割を担わせるというものだ。しかし現在ではカザフスタンの全人口に占めるロシア人の割合は4分の1以下に低下した。またナザルバエフ大統領は自国をカザフ人中心の独立した力のある国にしようとしており、キリル文字に代わりローマ字を採用したほか、同国をロシアに代わり欧州とアジアとの間の物流ハブにしようとしている。結局のところ、カザフスタンを中央アジアの一部にさせないというロシアの政策は失敗したと同氏は指摘する。

こうした2つの動きは最近の国際環境の変化にも一致しているという。中国は中央アジア、特にキルギスタン及びタジキスタンに対する投資を通して影響力を拡大しようとしている。一方ロシアと米国は自国あるいはその他の地域との問題への対応に追われており、以前ほど同地域に注意を払っていない。ロシアはこの内陸地域が、人口増、アフガニスタンとイスラム主義者からの安全保障上の脅威、ロシアへの出稼ぎ労働者からの送金への依存といった問題を抱えることから最終的にロシアの衛星国の地位に戻ることになると考えている。一方米国は、この地域が米国やトランプ大統領が掲げる「米国第一」主義から遠いところにあると認識している。

「昨年3月から1年間で同地域のすべての大統領が二国間会合を実施してきた」とナザルバエフ大統領は強調した。ウズベキスタンのミルジヨエフ大統領による方針の転換が過去20年の間に積みあがった課題の多くに着手することにつながったと述べ、同大統領のサミット開催の提案について賛辞を述べた。一方ロシア政府はサミット開催を旧ソ連諸国が旧ソ連の圏内から抜け出ようとする試みと見なし警戒している。中国と米国の一部でも中央アジアの外交上の位置付けについて憂慮の声が出ている。

今回のサミットで5カ国は今後毎年3月に首脳会合を行うことで合意した。次回会合はウズベキスタンのタシケントで開催される予定だ。また、それまでの間に5カ国の副首相級が参加する作業委員会を創設し協力を進める計画だ。

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