フランスの優勝で終わった今年のサッカー世界選手権(W杯)だが、北欧では観客を装った移民がロシアを経由して不法入国するのではという懸念が高まっていた。W杯期間中は観戦目的であればビザなしでロシアに入国できたためだ。実際にロシア側で拘束された人も、フィンランドで見つかった人もいるが、6,000人以上がロシア国境を越えて到来した2015/16年冬の再来とはならなかったようだ。
ロシアはW杯開催期間中の特例措置として、試合の入場券とロシア当局の発行する観客登録証(ファンID)を提示できればビザなし入国を認めた。観客登録証の交付では、イラン、セネガル、モロッコ、エジプトからの申請が目立って多く、これらの国から欧州連合(EU)を目指して似非「観客」が来るのではという疑いが浮上した。
サンクト・ペテルブルクの北にあるカレリア地方はフィンランドと国境を接しており、その全長はなんと1,300キロメートル。森林におおわれ、住む人もないことから、ここが「移民ルート」になるのではと思われていた。
実際に、ロシアの国境警備隊はモロッコ人4人、セネガル人3人、イラン人2人をフィンランド国境付近で拘束した。これらの人々は本国送還処分となる。
一方でフィンランド側でも不法入国したナイジェリア人1人とモロッコ人3人が見つかったということだ。
15/16年の冬にはシリアやアフガニスタン、イラク、イランからロシアを経由して6,000人以上がフィンランドとノルウェーに入国した。ロシア政府はこれらの難民・移民が出国する限り、自国には関係ないという態度で、当初は移動を認めていた。
しかし、フィンランドとノルウェーが自国民とロシア国民以外の人について、ロシアとの行き来を一時的に禁止。「ロシアが社会的不安をあおるため、北欧へ移民を組織的に送り出している」という憶測まで飛び出した。
以来、ロシアが監視を強めたため、北回りでの不法移民は後が途絶えた。しかし、この事例が北欧人に与えたショックは強かったらしく、今回の「W杯に便乗した不法入国」の懸念もそれを物語っているといえよう。