スーパーチキンの復活~ロシア

ソ連末期まで国民の大事な食料であった「スーパーチキン」がロシアで復活する。米国からの食料制裁に備えるとともに、国内養鶏業者の育てるブロイラー品種を独占する欧米系食品大手に対する挑戦の意味もある。

ソ連は西欧の食肉生産に遅れまいと鶏の品種改良に取り組み、1972年に「ガルス・ガルス・ドメスティクス」をおいしく、大きくした品種「スメナ(=変化、の意)」の開発に成功した。スメナはソ連崩壊まで続く食肉増産に貢献した。

しかし、ソ連崩壊で補助金は途絶え、欧米のより進んだ品種がロシアに流入した結果、スメナは絶滅の瀬戸際に追い込まれた。国内養鶏業者は米タイソンフード傘下のコッブ・バントレスと独EWグループ系のアヴィアゲン(Aviagen)の品種に依存するようになった。

ロシア政府はこの状況を「リスクが大きすぎる」と判断した。米国は食料禁輸の可能性などには触れていないが、万一のため、準備をしておいたほうが良いと考えたのだろう。

政府は新しい国産品種の開発チームを組織し、ここで生まれた新品種がようやく試験販売の段階までこぎつけた。ゆくゆくは他の旧ソ連諸国、そしてベトナムをはじめとするアジア諸国への輸出を目指している。

ロシアの農業企業は昨年、コッブ・バントレスとアヴィアゲンから種鶏2,300万羽を推定1億ドルで購入。これらの種鶏が産んだ卵から食肉用ブロイラーが生まれ、400万トンを超える鶏肉になったとみられる。

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