ユーロ圏、ESM改革と共通預金保険保証制度導入で合意できず

ユーロ圏の金融安全網である欧州安定メカニズム(ESM)の改革、銀行同盟の最終段階となる共通の預金保険保証制度(EDIS)導入をめぐる調整が難航している。ユーロ圏19カ国は5日に開いた財務相会合で同問題を協議し、ESMの機能強化で原則的に合意したものの、詳細がイタリアの抵抗で決まらず、最終決定を見送った。EDISに関する協議も独、伊の対立で進展はなかった。

ESMは金融危機に陥った国に支援を行うため創設されたもの。改革案は欧州連合(EU)内の銀行の破綻処理に活用される「単一破綻処理基金(SRF)」の資金が不足した場合に、ESMの資金を銀行救済にも活用できる仕組みを導入するなど、機能を拡大することが柱となっている。6月のユーロ圏財務相会合で承認された。しかし、関連条約の改定をめぐる調整がつかず、最終決定に至っていない。

問題となっているのは、集団行動条項(CAC)の改定。CACはESMに関する条約に付帯されているもので、国債の債権者の一定数が合意すれば、償還期限や利回りなどを変更できるようにする制度だ。財政に問題があるユーロ参加国の迅速な債務再編を進める狙いがある。現在は銘柄ごとに債権者の合意が必要となるが、ユーロ圏各国が2022年以降に発行する国債については同条件をなくし、債務再編に向けた手続きを簡素化することが検討されている。

同条項改定の障害となっているのがイタリア。ユーロ圏でギリシャに次ぐ巨額の債務を抱えていることから、政府の意思に反して債務再編を迫られることを警戒している。

伊政府は6月、改定案の原案に同意した。ところが、9月に発足した新連立政権に加わる左派「五つ星運動」が反発し、方針を転換。EDIS導入が決まらないかぎり、支持しない姿勢を示している。

EDISをめぐっては、ドイツ政府が自国で集めた資金を金融システムが脆弱なユーロ圏の他の国の預金者保護のため使うことになるとして難色を示し、前提として銀行がリスク管理を強化することを要求しているため、実現がずれ込んでいる。

ドイツは妥協案として、銀行のリスク対策として、国債保有を制限することを先ごろ提案。これによって合意にこぎ着けるとの期待が高まった。しかし、今回の財務相会合でイタリアが、国内の銀行に悪影響を及ぼすとして反対に回り、物別れに終わった。これを受けてESM問題も原則合意にとどまり、最終決着に至らなかった。ユーロ圏財務相会合(ユーログループ)のセンテノ議長(ポルトガル財務相)は年内最後のEU首脳会議での合意を断念し、来年1月に再協議する意向を表明した。

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