コンサルティング大手のマッキンゼーは先ごろ、中東欧の自動車産業の研究開発に関する現状とその未来に関する報告書を発表した。同報告書はアジア諸国との競争の激化や自動運転、電気自動車(EV)といった新技術の登場など同産業を取り巻く環境が急速に変化しているのを踏まえ、欧州の自動車関連産業によるさらなる研究開発投資の必要性と中東欧地域の活用を訴えるものとなっている。
同報告書は「欧州自動車産業の競争力再考:中東欧における研究開発のチャンス」と題するもの。同書は自動車産業が現在直面する変化は過去のものとは異なっており、そのスピードと複雑性により破壊的な影響をもたらしかねないと警告を発している。それに対応するため中東欧諸国への投資を増やし、低賃金で高度な技術を持つ現地の人材を活用すべきだとの見方を示している。
マッキンゼーによると、中東欧地域におけるICT(情報通信技術)分野での求人数は2016年から18年にかけて43%増加しており、良質な人材の確保は同地域にとっても重要になっている。同地域では他の先進国に比べ賃金が60%低く抑えられているほか、税制優遇措置や国の補助金制度、インフラも整備されている。今後、中東欧諸国は産業界と高等教育、貿易、民間、政府の各機関・団体との結びつきを強化して地域クラスターを形成し、研究開発中心のエコシステムを築くことができれば、地域経済全体にプラスの影響がもたらされ、航空機産業など他の産業を利するところが大きくなるとしている。
同報告書は中東欧地域が研究開発部門の移転先として優れている点に
豊富な人材
低廉な人件費
高度な技術水準と研究開発能力
交通・デジタルインフラの充実
政府の各種支援措置――を挙げた。
マッキンゼーは、欧州の自動車メーカーは研究開発戦略を慎重に検討する必要があり、その際中東欧地域が鍵となるとの見方だ。欧州の自動車メーカーの研究開発が中東欧で促進されれば、企業と同地域の国々の双方が利益を得ることができるとしている。