ハンガリーのオルバン政権が、非常事態の無期限延長を狙っている。「新型コロナウイルスの世界的流行という過去に例をみない状況に対応するために必要」と説明しているが、野党や人権団体からは「民主主義の基盤を崩す試み」と非難の声があがっている。20日議会に提出された関連法案は、今週から議会で審議される見通し。来週にも採択される可能性がある。
政府は今月11日、新型コロナの流行拡大を抑制するための措置として非常事態を発令した。これにより首相の発布する政令に法律と同様の効力が与えられた。期限を定めることなく非常事態を延長すれば、立法府である議会の権限が失われる可能性がある。
新法案が成立すると、報道・表現の自由のさらなる制約につながる恐れもある。「誤った情報を公表して人々の不安をあおったり、国民を守るための政府の努力を妨害」した場合、最長5年の懲役刑に処するという条項が含まれているためだ。
オルバン首相は2010年に政権に就いて以来、メディア法や司法改革、憲法改正などの施策に関連し「民主主義を後退させ、司法国家の基盤を崩す」と批判を受けてきた。これが新法案に対する懸念の背景にある。
ゾルターン・コヴァーチ内閣広報官は22日、期限の規定がないのは「議員が病気で国会会議に出席できなかった場合のため」と説明。報道の自由を脅かすという批判は「偏見に基づく無責任」なものとし、法案は「理に適っている」と主張した。
ヘルシンキ人権委員会を含む現地の非政府機関(NGO)4団体は、22日の段階で政府に対し、法案に期限を盛り込むことや、将来出される政令に関する憲法訴訟の可能性を広げることを求めている。