生物多様性と持続可能な食料システムの新戦略発表、グリーンディールの一環で

欧州委員会は20日、生物多様性の保全と持続可能な食料システムの構築に向けた新戦略を発表した。両分野は2050年までに域内の温室効果ガス排出量を実質ゼロにする気候中立を達成しつつ経済成長の実現を目指す「欧州グリーンディール」の下、欧州連合(EU)が取り組んでいる政策のひとつで、相互に補強し合う関係にある。生物多様性の喪失を食い止めながら、EUの食料システムを競争力のある持続可能な世界標準とするため、欧州委は化学合成農薬や肥料の使用削減、有機農業の推進などの主要項目について野心的な目標を打ち出した。

新たな生物多様性戦略は土地や海の持続不可能な利用、天然資源の乱開発、外来種の侵入など、生物多様性の損失を引き起こす要因を排除し、30年までに欧州の失われた生物多様性を回復軌道に乗せるための取り組みを前進させる。具体的には欧州の土地と海洋の少なくとも30%を効果的に管理された保護地域に転換することや、農業用地の少なくとも10%を多様性に富んだ景観に戻すなどの目標を盛り込んだ。

一方、持続可能な食料システムの構築に向けた「農場から食卓まで(Farm

to

Fork)」戦略は、食料安全保障を確立し、食料の生産から消費に至る一連の流れが環境や気候に与える負荷を減らしながら、すべての人が将来にわたり、良質な食料を合理的な価格で入手できるようにするためのもの。具体的には化学合成農薬と化学肥料の使用をそれぞれ50%、20%削減するほか、抗生物質を含む抗菌剤の使用の50%削減、農業用地の少なくとも25%を有機農業のために確保する(現在は8%)などの目標を掲げている。

欧州委は環境や気候変動への取り組みを怠れば、深刻な自然災害や異常気象を引き起こし、EUの域内総生産(GDP)の最大2%が失われると警告。一方、有機農業を推進することで、1ヘクタールあたりの雇用を従来型農業と比べて10~20%拡大することが可能との見方を示した。

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